海と毒薬 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1960年7月15日発売)
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感想 : 892
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うねりが止まらない一冊。

自国の黒い歴史、米軍捕虜の生体解剖事件は衝撃過ぎた。
医学の進歩という名の実験。
手術という名の殺人。

この行いはもちろん、そこに至るまでの関係者の心のうねりがそのままこちらに黒いうねりとなって襲い掛かる、その連続が苦しかった。

誰もが死んでいく時代。ならば病院で死ぬか空襲で死ぬかの違い。

それは空虚感しか持ち得なくなったからこその言い訳。

人の心をもぶち壊し、空っぽにする戦争というものが改めて心を抉る。

善か悪か、その境界線で自分の心と心が戦う、一人の医師の心の戦争を描いた小説だとも思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年8月23日
読了日 : 2022年8月23日
本棚登録日 : 2022年8月23日

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