*お父さんが仮退院した日。病院から家までタクシーで移動した。窓から「あれは梅かな、桜かな」とあちこち指を指すと、「まあ、梅だろうね」とお父さんが言った。
p27
数日後、
「良かったねえ、あの日は晴れて」
と雨に降りこめられた部屋の中で言うと、
「梅が見えたからね」
と父が言うので、ああ、良かった、と思った。
この世に、梅と桜という気があって、それが少し時期をずらして咲いてくれるおかげで、この科白を言い合うことが可能になっている。良かった。
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- 感想投稿日 : 2022年9月17日
- 本棚登録日 : 2022年9月17日
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