湯島天神坂 お宿如月庵へようこそ 十三夜の巻 (ポプラ文庫 な 11-11)

著者 :
  • ポプラ社 (2021年11月5日発売)
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感想 : 8
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こんな宿が有れば、是非泊まりたいと思うお宿です。
十三夜の巻 ー 湯島天神坂 お宿如月庵へようこそシリーズの5作目
2021.11発行。字の大きさは…中。2022.04.04~08読了。★★★★☆
江戸は上野広小路から湯島天神に至る坂道の途中にある、噂の隠れ宿「如月庵」で部屋係として奮闘する梅乃17才と紅葉18才の物語です。
プロローグ、姑の残した玉手箱、酢いかの災い、鴻鵠(こうこく、大人物)の志、富士を仰ぐ村、エピローグ、の短編6話。

【プロローグ】
此度は、如月庵に10年務めて、植木の世話をし、草木を育て部屋係として働くお路34才の秘密が明らかになります。お路は、13才の時から女中として働いていた家のおばあちゃんが土の中に隠した五十両が入った壺を火事騒ぎの時に掘り出して、如月庵の庭の椿の根元に埋めています。
【姑の残した玉手箱】
布団店の岡本屋のおかみ、おきみは、仕えていた義理の母が亡くなり気が沈んでしまった。その義母の残した想いを知って、気持ちを立て直したお話しです。梅乃の心のこもったもてなしがおきみの心をほぐしていきます。心がほんわかして、気持ちがいいお話しです。
【酢いかの災い】
真鍋源太郎11才と御家人の長男・石塚守之助は、明解塾で優秀な成績ですが。守之助は、御家人でも身分の低いお徒士組の息子である源太郎が、三千石の旗本の叔父・真鍋宇一郎の養子に入ったのが我慢ならず虐めます。その虐めにとうとう負けて屋敷に閉じこもった。そこへ紅葉と梅乃が心配して行って立ち直らせる話です。この紅葉と梅乃が身分違いの大身旗本の養子とはいえ嫡男の心を開かせ、叱り、励まし、立ち直らせます。胸がスカッとして、この二人のたくましさを感じます。
【鴻鵠(こうこく、大人物)の志】
美濃のある藩の御殿医の三男で優秀な松島慎三郎16才は、江戸でも五本の指に入ると言われる医者・田辺良仙の私塾を辞めさせられて国元から兄が迎えに来るまで如月庵に泊まっています。部屋係の梅乃は、この生意気で、理屈っぽい若者が苦手です。近くの医者の宗庵の所に多くの急患が来て応援として駆り出される。そこで実際に患者に触れ医者としての自分を見直す話です。学問として机上で学ぶのでなく実地に患者に接して、人の命の重みを知った慎三郎は再度医者を志します。その過程が壮絶です。
【富士を仰ぐ村】
雅楽の京都方の流れをくむ南家の南藤奏太郎(そうたろう)は、富士山の見える村で笙(しょう)を奏でて暮らしていました。江戸の雅楽の家元が、その才能を認めて奏太郎に江戸へ招きます。そして如月庵に泊まり。明日家元へ行くとなったとき、大切な左手の薬指が動かなくなりました。奏太郎は、江戸で笙を奏でるのでなく、村の祭りなどで笙を奏でて村人たちと暮らすのが自分本来の役割だと気づきます。
【エピローグ】
お路が、壺を隠した椿を見守るために庭係として十年庭を見守って、大切に隠していた壺を新入りの柏に盗まれます。争いの中で、その壺に入っている五十両が如月庵の全員に知られて女将・松の判断で元の持ち主に返却します。

【読後】
読後感の良い本です。心が癒され、奮い立ち、気付きがありと、やさしく癒してくれる本です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2022年4月8日
読了日 : 2022年4月8日
本棚登録日 : 2022年3月20日

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