湯島天神坂 お宿如月庵へようこそ 十三夜の巻 (ポプラ文庫 な 11-11)

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591171738

作品紹介・あらすじ

<内容紹介>
時は江戸。
如月庵は上野広小路から湯島天神に至る坂の途中にあり、知る人ぞ知る小さな宿だが、もてなしは最高。かゆいところに手の届くような気働きのある部屋係がいて、板前の料理に舌鼓を打って風呂に入れば、旅の疲れも浮世の憂さもきれいに消えてしまうと噂だ。
人のいい部屋係・お蕗はよく庭の花の手入れをしている。だが、花が好きだというのは表向きで、じつは庭に埋めた金を毎日確認しているのだ。実はその金は、お蕗が奉公していた家の金で――

<プロフィール>
東京生まれ。学習院大学文学部哲学科卒業。フードライターとして活躍中。
『日乃出が走る』で第3回ポプラ社小説新人賞の特別賞を受賞しデビュー。同作で歴史時代作家クラブ賞新人賞ノミネート。著作に『金メダルのケーキ』『いつかの花』

感想・レビュー・書評

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  • こんな宿が有れば、是非泊まりたいと思うお宿です。
    十三夜の巻 ー 湯島天神坂 お宿如月庵へようこそシリーズの5作目
    2021.11発行。字の大きさは…中。2022.04.04~08読了。★★★★☆
    江戸は上野広小路から湯島天神に至る坂道の途中にある、噂の隠れ宿「如月庵」で部屋係として奮闘する梅乃17才と紅葉18才の物語です。
    プロローグ、姑の残した玉手箱、酢いかの災い、鴻鵠(こうこく、大人物)の志、富士を仰ぐ村、エピローグ、の短編6話。

    【プロローグ】
    此度は、如月庵に10年務めて、植木の世話をし、草木を育て部屋係として働くお路34才の秘密が明らかになります。お路は、13才の時から女中として働いていた家のおばあちゃんが土の中に隠した五十両が入った壺を火事騒ぎの時に掘り出して、如月庵の庭の椿の根元に埋めています。
    【姑の残した玉手箱】
    布団店の岡本屋のおかみ、おきみは、仕えていた義理の母が亡くなり気が沈んでしまった。その義母の残した想いを知って、気持ちを立て直したお話しです。梅乃の心のこもったもてなしがおきみの心をほぐしていきます。心がほんわかして、気持ちがいいお話しです。
    【酢いかの災い】
    真鍋源太郎11才と御家人の長男・石塚守之助は、明解塾で優秀な成績ですが。守之助は、御家人でも身分の低いお徒士組の息子である源太郎が、三千石の旗本の叔父・真鍋宇一郎の養子に入ったのが我慢ならず虐めます。その虐めにとうとう負けて屋敷に閉じこもった。そこへ紅葉と梅乃が心配して行って立ち直らせる話です。この紅葉と梅乃が身分違いの大身旗本の養子とはいえ嫡男の心を開かせ、叱り、励まし、立ち直らせます。胸がスカッとして、この二人のたくましさを感じます。
    【鴻鵠(こうこく、大人物)の志】
    美濃のある藩の御殿医の三男で優秀な松島慎三郎16才は、江戸でも五本の指に入ると言われる医者・田辺良仙の私塾を辞めさせられて国元から兄が迎えに来るまで如月庵に泊まっています。部屋係の梅乃は、この生意気で、理屈っぽい若者が苦手です。近くの医者の宗庵の所に多くの急患が来て応援として駆り出される。そこで実際に患者に触れ医者としての自分を見直す話です。学問として机上で学ぶのでなく実地に患者に接して、人の命の重みを知った慎三郎は再度医者を志します。その過程が壮絶です。
    【富士を仰ぐ村】
    雅楽の京都方の流れをくむ南家の南藤奏太郎(そうたろう)は、富士山の見える村で笙(しょう)を奏でて暮らしていました。江戸の雅楽の家元が、その才能を認めて奏太郎に江戸へ招きます。そして如月庵に泊まり。明日家元へ行くとなったとき、大切な左手の薬指が動かなくなりました。奏太郎は、江戸で笙を奏でるのでなく、村の祭りなどで笙を奏でて村人たちと暮らすのが自分本来の役割だと気づきます。
    【エピローグ】
    お路が、壺を隠した椿を見守るために庭係として十年庭を見守って、大切に隠していた壺を新入りの柏に盗まれます。争いの中で、その壺に入っている五十両が如月庵の全員に知られて女将・松の判断で元の持ち主に返却します。

    【読後】
    読後感の良い本です。心が癒され、奮い立ち、気付きがありと、やさしく癒してくれる本です。

  • シリーズ第5弾。

    上野広小路から湯島天神に至る坂にあるお宿<如月庵>を舞台にした人情噺。プロローグ、連作4話、エピローグという構成になっております。

    今回は<如月庵>の部屋係・お蕗の秘密・・・隠されていた過去と本性が明らかになります。
    第一夜(話)「姑の残した玉手箱」で、行き倒れていたところを助けられ<如月庵>で働く事になった、謎の女・柏とお蕗の攻防戦のような探り合いがエピローグまで続き、サスペンスちっくでハラハラします。
    各連作パートでは、例のごとく訳アリのお客様の事情に梅乃と紅葉が首を突っ込み、結果的に丸く収まる展開なのですが、第二夜(話)「酢いかの災い」は、宿のお客ではなく、近所の塾に通う武家の少年の話。被害にあった源太郎が立ち直ったからいいものの、人の弱みに付け込む守之助のような性根の腐ったヤツは結局改心していないのだろうな・・と、ちょとモヤっとしました。
    それに比べて第三夜(話)「鴻鵠の志」に登場した慎三郎は、最初は面倒くさい人でしたが、ラストには心入れ替えて別人のように爽やかになっていたので良かったです。
    さて、まだまだ秘密がありそうな<如月庵>。今後どのような事が明らかになっていくのでしょうか、続きが楽しみです。(続くよね?)

  • 端から見ての幸せと本人が思い込んでいる幸せと。
    意外に他人の方がよくわかるのかもしれない。
    けれども、自分で納得できないとやっぱり進めないのです。

    今回のひみつはお蕗。
    だんだん皆のひみつがわかってくるにつれ、如月庵の奥深さもあらわれてくる。

  • 2022.07.05

  • 女は怖いね

  • p.27 七歳の六歳の息子
    p.101 お稲さんと二人で→お定さんの間違い

    お蕗の秘密にまつわる巻。
    時々胸の痛いところをつかれる良い人情物。

  • プロローグ 第一夜 姑の残した玉手箱
    第二夜 酢いかの災い 第三夜 鴻鵠の志
    第四夜 富士を仰ぐ村 エピローグ

    いろいろある江戸のお宿です。ちょっと怖いようなこともありますが一度お世話になってみたいものですね

  • だから、もう、これからは葛飾に帰されるなどと考えるな。ここがお前の家だ。

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