かくて行動経済学は生まれり

  • 文藝春秋 (2017年7月14日発売)
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行動経済学のリチャード・セイラーがノーベル経済学賞というニュースが飛び込んできた。
オレの本棚を見返してみると、
リチャード・セイラーの『実践行動経済学』も
サンスティーンの『選択しないという選択』も
並んではいるけれど、ぜんぜん内容が理解できてなくて、★か★★の評価になってた。
特にサンスティーンの本は、文章ばかりがダラダラ続き、具体的な指標やデータも殆ど無いので、ワケが分からず、呆れて投げ出した始末だ。

サンスティーンが『サイエンス』に掲載されたセイラーの『消費者の選択の実証的理論を目指して(人がしでかすマヌケなこと)』や、ダニエスとエイモスの論文、プロスペクト理論について読んだ時、理解するのが難しかったp.399と率直に述べているのは、彼が書いた本を読めば、そうだろうなーって実感できる。要するに、弁護士の文系の脳では、理解できないレベルの話だ。

セイラーの『行動経済学の逆襲』を図書館に予約して、今、待ってるとこなんだけど、本が届くまで、すでに借りていたこの本を読んでいる。

マイケル・ルイスはノンフィクション作家で、その作品は映画化もされてる。

リチャード・セイラーが「映画に出演してアカデミー賞は逃したけど、ノーベル経済学賞は取れたよ」みたいな冗談を言ってたけど。
セイラーが本人役で出演した映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』の原作『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』を書いたのが、このマイケル・ルイスだ。

398
ダニエルとエイモスの議論は、法律や社会政策の分野に波及し始めた。
心理学が経済学を通して他の領域に入り込んでいく。

リチャード・セイラーがそれを「行動経済学」と名づけた。
プロスペクト理論は発表されてから10年間は引用されることがメッタになかったが、2010年には経済学の論文で2番目に多く引用されていた。

2016年には経済学の論文で10本に1本は、行動経済学の視点が含まれていた。
セイラーが米国経済学会の会長を退いた時期だ。

セイラーが声をあげたとき、キャス・サンスティーンは、シカゴ大学の若い法律学教授だった。
セイラーが『消費者の選択の実証的理論を目指して』を発表したとき、サンスティーンは、『サイエンス』に掲載されたダニエスとエイモンスの判断ついての論文と「プロスペクト理論」について読んだ。
「弁護士にとってはどちらも難しかった。一度読んだだけでは分からなかった」と述べている。だろうな。サンスティーンの書いた本を読んだけど、とても行動経済学を理解できるような理系の脳を持った人とは思えなかったもん。

400
サンスティーンが特に興味を持ったのは「選択アーキテクチャ」と呼ばれるものだ。
サンスティーンがオバマ大統領に招かれてホワイトハウスで働くようになってから、連邦政府は損失回避とフレーミング効果に敏感になっている。
サンスティーンは、政府には経済諮問委員会とともに、心理学諮問委員会が必要だと主張した。

168
その頃、社会科学で一番信じられていた理論は、人間は合理的に行動するということだった。

178
統計学者でさえも、わずかな証拠から一気に結論へと飛びついてしまう

184
人の直感的な予測を支配しているのは、世界についての一貫した間違った見方である

185
脳は記憶に騙される

221
歴史研究家は偶然に過ぎない出来事の数々に、つじつまのあった物語をあてはめてきた。それは、結果を知ってから過去が予測可能だったと思い込む「後知恵バイアス」のせいだ。

239
北米大陸では、自動車事故よりも多くの人が、医療事故で命を落としていた。
医師の直感的判断が医療事故を引き起こす。
247
医師は同じ病気の患者に全く違う診断をくだす
250
人間は命にかかわるリスク判断すらうまくできない

269
人は効用を最大化するように行動する。
この期待効用理論は、経済学の大前提であるが、これでは、人が宝くじを買う理由すら説明できない。
ダニエルとエイモスは、心理学の知見から新たな理論を提唱した。
290
期待効用理論では、人の意思決定を予測できない。

292
ダニエルはエイモスの書いた教科書を、火星語で書かれた料理の本を読むように読んだ。読むというより解読だ。ずっと前から応用数学の才能がないことには気づいていたが、数学の論理を王ことはできた。
・・・・
ダニエルもまた、社会科学における数学の威光の高まりから逃れる事はできなかった。

293
モーリス・アレは、特にフォン・ノイマンとモルゲンシュテルンが独自の理論を構築して以来、人間の行動の数学モデルが、人の選択行動についての正しい説明として扱われることには不満を持っていた。
1953年の経済学者が集まるある会議で、アレは期待効用理論への決定的な反論を行った。

296
人は効用を最大化するのではなく、後悔を最小にしようとする

327
経済学者が連絡をとるのは、常にエイモスだった。
エイモスは経済学者と似た論理的な頭脳の持ち主で、彼らはエイモスが天才であることがすぐに分かった。
一方、ほとんどの経済学者にとってダニエルの頭は不可解だった。


主流派の経済学者は伝統的に
「人間は経済合理性にもとづいて行動する」
という前提のもとに経済理論を組み立ててきた。

でも、現実には、人は様々な非合理な行動をとる。
経済学の、この前提が、どう考えても、怪しいということは、以前から、多くの経済学者も指摘してきたし、素人が普通に考えても、分かることだよね。

プリンストン大学の心理学者ダニエル・カーネマンとスタンフォード大学の故エイモス・トベルスキーによって創始された行動経済学の研究者たちは、人間が経済合理性から逸脱する実例を次々と明らかにした。

消費者はなぜ非合理な行動をとるのか?
日本人の大好きな血液型占いや、毎朝の星座占い、星占い、右脳左脳の話。
あるいは中国人の大好きな風水。
この現代においてさえ、バカげた迷信が山盛りなんだから、そりゃー脳は誤作動するだろうし、消費行動においても様々な不合理なこだわりがあって、消費者は効用最大化する合理的な行動をとらない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経済
感想投稿日 : 2017年10月14日
読了日 : 2017年10月14日
本棚登録日 : 2017年10月14日

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