数十年気になりつつ手の出せなかった本の作品社版。 A5判、479ページ。 下1/3ほどが2000項目に及ぶ語註です。本文もルビがものすごいことになってます。
という物理的条件だけでなく、想像を遙かに上回る難物でした。
事件は連続殺人で、おどろおどろしい描写もありますが、近年のホラーに慣れた方にはさほど衝撃感はなさそう。 ただ、物語が進行する舞台は薄暗い時代感があって、期待を裏切らない雰囲気。
謎解きは容疑者のアリバイや動機にはさほど踏み込みません。まず、普通の方法での謎解きを楽しむ物語ではなさそうです。 それよりは、文学的素養がかなり深い関係者との言葉のやり取りの細部を捉え、様々な暗号法やオカルト的知識を駆使して、真相を探ろうとします。 というか、真相に迫るつもりがあるのか? と問いたくなるくらい、この物語は連続殺人も人の命も二の次にして蕩々と語る探偵の知識ひけらかしに尽きます。
これについて行けるかどうかで、評価は極端に分かれるのではないでしょうか。 確かに三大奇書の一つに挙げられるだけのことはありますね。
ところで、こんなものを見つけてしまいました。 全編無料で読めるようです。
→ 「まんがで読破 黒死館殺人事件」https://vcomi.jp/page_product/page_product?seriesId=42
登場人物(特に探偵)の風貌が私のイメージとずいぶん違ったのが残念ですが、ともかく、蘊蓄や謎解きの複雑な部分を大胆に削ぎ落として、ストーリーの本筋はわかりやすくなってると思います。
- 感想投稿日 : 2019年11月7日
- 読了日 : 2019年8月13日
- 本棚登録日 : 2019年11月7日
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