探偵はバーにいる (ハヤカワ文庫 JA ア 3-1)

著者 :
  • 早川書房 (1995年8月1日発売)
3.11
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本棚登録 : 3937
感想 : 482
5

再読。やはり初期は伏線の回収も鮮やかだし文章も密度が高くていいなー。
後期のようなススキノを揺るがす大事件でもなく、行政の腐敗にメスを入れる批評的な視点が強いわけでもなく、言ってしまえば、地味な事件だけど。
1番のどんでん返しは、読者を驚かせる仕掛けではなくて、人間の多面性だろう。
「俺」が馬鹿にしていた人間が実は全てを動かしていて、安易に他者を馬鹿にする「俺」を逆に軽蔑する。実は友情に厚い人間で、人情の機微を見抜いている。
沈黙する「俺」が、非常に苦く、切ない。
ふやけたところがなく、どこを読んでも軽妙でいかしている。モンローとの別れのシーンは愁眉。
映画化により、映画から入った、ハードボイルド・ミステリを読み慣れていない素人さんが低い評価をつけ始めた、という印象。
文章を読み慣れているか人か否か、書かれた文章を見ると割合に予想できる。
評価は人それぞれで構わないと思うが。未知のものに遭遇したときにとりあえず拒絶から入る、という精神のあり方は、豊かなものだと自分には思えないね。

また再読。どんだけ東先生好きなんだろう俺は。。。
愚かな人間に対する著者の眼差しは、冷徹だけれど、真摯で丁寧である。後年の作品では愚かな人間をストレートにバカにしてしまうようなところに違和感を感じていたので、愚かと思っていた奴が実は。。。というどんでん返しも含め、著者の眼差しが嬉しいね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年5月18日
読了日 : 2017年5月18日
本棚登録日 : 2017年5月18日

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