行為無価値の雄、井田先生の待望の体系書。
ドイツの判例学説を多く取り入れたうえで、行為無価値の立場から一貫して記載されている。
自説が述べられている部分では、必ず判例通説の丁寧な解説もなされているので、判例通説で一貫した理解をすることもできます。
なお、井田刑法学の独自の主要なアウトラインは以下のとおりです。
1 行為論については目的的行為論に立つ
2 構成要件は違法(不法)類型であって、責任類型ではない
3 違法性の実質は行為無価値が主であり、結果無価値は従である
4 違法性阻却事由については消極的構成要件理論にたつ
5 故意(過失)は構成要件的故意のみを認め、責任故意(過失)を認めない
6 緊急避難は責任阻却が原則であり、著しく保全法益が侵害法益を上回る場合には違法性阻却事由となる(二分説)
7 制限責任説にたつ
繰り返しになりますが、上記の特徴に臆する必要はまったくありません。全論点にわたって判例通説の解説はしっかり丁寧になされており、むしろ上記井田説との対比のなかで、判例通説の理解も深まりました。また、過失論や、過失行為と緊急行為などの解説部分は、過失に苦手意識がある方にこそぜひ読んでいただきたい簡潔にして要を得たとくに秀逸な記載だと思います。
目次、索引を除き567頁。
刑法を学ばれる方には、行為無価値刑法学の理解のためにぜひ一読されることをお勧めしたい一冊です。
なお、わたくしごとながら井田先生にはロースクールでご指導をいただくことができました。
先生の講義は秀逸のひとことでした。
- 感想投稿日 : 2009年3月27日
- 本棚登録日 : 2009年3月27日
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