ひとつ上のアイディア。

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  • インプレス (2005年11月2日発売)
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感想 : 63

「アイディア」は、左からでも右からでもアイディアと読める、一種の回文である、という冒頭の言葉にショックを受けました。
これまで、全く気付かなかったからです。
自分って頭が固いんだなあと、のっけからジャブを入れられた気分でした。

アイディアとは、情報に吹き込まれたイノチだという感覚は、広告クリエイターとしては大切だと思います。
この本は、そんなアイディアにあふれた広告クリエイターたちの考え方について、インタビュー形式でまとめられたものです。

私は、時代の潮流に乗ったヒットものには疎い方ですが、そんな私でも街を歩いていると、TVを飛び出して一大ムーブメントになっているような流行りのものを目にすることがあります。
その仕掛け人たるクリエイターたちの発想の原動力や発想法などにターゲットを絞ったこの一冊。
以前コピー作品集を読んだ、岩崎俊一氏も登場しています。

広告の世界を目指す人には欠かせないバイブルとなりそうですが、他ジャンルの人にとっても、価値観の置き方、揺らがせ方など、自由で柔軟な思考をもつことの大切さが理解できるようになっています。
誰も天才的に、ぱっと世界を動かすアイディアをひらめいているわけではなく、その人自身の人間性を含めた思考の中かから、今この時の社会にうまく乗せられるものを選んでいく、その段取りも、隠すことなく教えてくれている業界の人たち。

やはり、最終的に、作品の良しあしを左右するのは個人のセンス。そこをどうやって磨き続けていくか、ブラッシュアップへの飽くなき努力など。
普段の考え方ひとつからして違うため、人気クリエイターたちのアンテナの動かし方が新鮮でした。

簡単でさりげないものは、一般に受け入れられやすいものであり、そういう普遍的なものこそ生み出しにくさも生じます。
奇をてらいすぎると、人の心はついてこないか、すぐに離れてしまいます。
そんな、時代と人間を先読みする感性をどう育てていくのか。
地道な努力がやはり必要だということも分かりました。

いろいろな人が、自分なりのアイディアの生み出し方を持っていますが、基本は一つ。
「それまで構築してきた自分の中にしか、アイディアはない」ということです。
人間力と感性を高めることが大切だということでしょう。
業界以外の人向けにか、わかりやすく書かれていますが、もう少し広いジャンルの人たちを集めても面白かったのではないかと思います。

それにしても、ペプシマンはアメリカ本社のキャラクターだと固く信じていましたが、大貫卓也氏が編み出したものだったと知って、驚きました。
完全にアメコミ調なんですけれどね。
受入られやすさも全てコミで、創造したんですね。
「あったあった」と懐かしくなる、印象深いCMがたくさん紹介されて、懐かしくなりました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 芸術・文化
感想投稿日 : 2011年10月11日
読了日 : 2011年10月11日
本棚登録日 : 2011年10月11日

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