モダン語の世界へ: 流行語で探る近現代 (岩波新書 新赤版 1875)

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  • 岩波書店 (2021年4月22日発売)
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感想 : 11

1900-1930年代の日本で生まれた「モダン語」を通じて、その言葉の背景にあった時代や人々の心理を描き出す本。
この著者の本を読むのは[ https://booklog.jp/item/1/4121911385 ]に続き2冊目。前の本はとにかく論理が緻密で読むのに骨が折れた記憶があるが、本書はそれに比べ非常に緩い。テーマ自体がそもそも自然発生の俗な言葉だし、時々著者の個人的な経験(1960年代)が登場したりもする。
前とは随分違うことをやっていると思ったら、「あとがき」で説明されていた。概念や分析視角を明確に設定して分析していく思想史研究の方法に一方では疑問を感じ、概念化されていない日常語に着目する「思詞学」を提唱するというもの。

お陰で論考というより言葉に関するエッセイというノリでも読めるのだが、時々鋭い指摘があってはっとさせられる。
・「しかし、日本が一九三七年以来、戦い続けている敵は中国であり、敵性語を本当に追放しなければならないのなら、漢字そのものを追放しなければならないはずだった。ただ、その根本的矛盾に気づいていたとしても、それを口にすることは許されない空気が支配していた。(p172)」
・「東アジア世界においては、男性の断髪と洋装が「近代としてのモダン」を、女性の断髪と洋装が「現代としてのモダン」を表象するという見方(p135)」明治初期、男性には断髪が推奨されたのに対し、女性の断髪は法律で禁止された。
・「だが、郷土愛が祖国愛にそのままに直結するうわけではない。郷土愛=パトリオティズムが強固であればあるほど、祖国愛=ナショナリズムと相容れなくなることもある。(中略)「日本本土=内地」に対する「地方=外地」として、朝鮮・台湾・樺太・南洋諸島・満洲などがあった。(p282-283)」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年1月29日
読了日 : 2021年9月24日
本棚登録日 : 2021年5月6日

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