自然災害とパンデミックによって引き起こされたディストピア系のSF。
新型コロナ禍のもとで読むと独特の感慨がある。感染/非感染を判別できない感染症により人が分断されているという設定にリアリティを感じる一方で、それに対する人や社会の振舞い方には、こんなものじゃないなと斜に構えてしまいそうになる。
そういった面もあるのか、自分のコンディションが良くなかったのか、文体が合わなかったのか、細かいところばかり気になって入り込めなかった。
たとえばヒロインの国枝すずとの関係。「隠れ美人」とか声が良いとかの描写はあるが、実際の関わりは別れ際に励ましの言葉をかけられたことだけだ。それが主人公の視点から心の支えになるのは分かるけれど、相手にしてみれば再会していきなり人質に取られた状況で、それだけの関わりを基に心を許すのは急すぎる。その後の急な関係の進展は仮想現実だったことが判明するのでむしろ納得できるが。
自給自足生活のコミュニティについて。2036年に70代ということは現在でいうと50代前後な訳だが、東京近郊に住むその年代の人に、突然自給自足を始められるほど原始農業の知識があるだろうか?参考書を図書館に探しにいく場面もあるが、検索機も無しにタイトルを特定?荒れ放題であろう棚の中で、そんな人気本が所定の位置にあったの?と、どうでもいいことを気にしてしまった。そういう余計なことが気になる時点で、自分には合わなかったということなのだろう。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2020年8月23日
- 読了日 : 2020年8月22日
- 本棚登録日 : 2020年8月10日
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