ミニヤコンカ奇跡の生還 (ヤマケイ文庫)

著者 :
制作 : 徳丸壮也 
  • 山と渓谷社
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本棚登録 : 136
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635047241

感想・レビュー・書評

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  • 中国の登頂困難とされる山ミニヤコンカ、これに挑んで手足を失い生還した著者による手記です。
    登山仲間と共にしっかりと計画を立てて臨んだミニヤコンカでしたが、はやる気持ちと慎重との葛藤が初期からあったようです。
    しかし判断を誤った瞬間に自覚することは難しく、遭難という形になって知ることになりました。
    過酷な環境での絶望的な状況、最悪の下山が始まります。
    凍傷、幻覚・幻聴、そして友の死…残酷が続くのです。
    悲惨な経験の後ですが、著者は山を諦めることはできません。
    山にはそれ程の魅力があるのですね。
    遭難防止の実用書ではありませんが、ミニヤコンカ登頂を目指した個人の記録として価値は絶大です。

  • 潤ちゃんからの推薦図書。あっという間に完読した。「どうしてあなただけ生き残ったのですか?」そんな言葉に苦しんだと思う。一歩進むのに一分間もかかる重労働の繰り返し、気の遠くなる時間の感覚が山登りの楽しみ。自分にはとても真似できないが、命を懸けてでも惜しくないという魅力が潜んでいるのであろう。日常の中では生まれない一編の詩を求めて山に入り込む。

  • 体験は面白く感動したが、著者の嗜好(詩とか)にピンと来なかったのが残念。

  • 壮絶な生還の体験記に言葉を失った。

    標高7556のミニヤコンカ頂上に肉薄するも登頂を断念。下山を試みるも道を見失い、一面雪と氷の世界を19日間さまよう。

    仲間を失い、凍傷で両手指両足を失った。その代償として得たものは何だったのか・・・。

    連続して起きる不測の事態、重なる小さなミス。撤退を決断できなかった過ち。一つ一つのミスが小さくてもそれが幾つも重なれば重大な事故を引き起こす。
    登山に限らず様々な分野で起きた大きな事故は、小さなミスが重なり合って生じている事が報告されている。

    生還した松田氏が「犯した過ちと数々のミステイクをあえて公表しなければならない」と後書きに記しているが、この本は失敗学として学ぶなら大変有益であろう。

    我々の人生にも起こりうる重大なミスは、小さなミスの積み重ねと見通しの甘さ、引き際を決断できなかった所に生ずる。
    そういう意味で本書は単なる登山関係の本でなく、人生に起こりうる危機から回避する智慧と教訓に満ちている。


    1982年の出来事ではあるがその体験は今なお色あせず、現代に生きる人々に生きる意味を問いかけている。

  • 生への執念がすごい。私だったらソッコー諦めてしまうだろうな...


  • 言葉の端々の、多少いいわけめいたものも、女性隊員への力量不足の指摘も、なぜ待っててくれなかったのかという恨み節も、包み隠さず書き記したのは凄い勇気。体重が30キロ近くも落ちた…肉という肉の、すべてのエネルギーを使って生き延びたすごさがよくわかる。私も登山をするが、大嵐や-20℃の中ビバークしていると、自分が人間ではなくなっていくような麻痺した気持ちになっていく。時間は間延びして長いのか短いのかよくわからなくなってくる。日本の山でさえそうなのだから(とはいえ日本の山も厳冬期の高山は簡単ではない)、ミニヤコンカという世界の果てでは尚更そう感じただろう。

    遭難寸前まで疲れすぎると、水さえエネルギーに変えられなくなるのだ。その場合寝て、回復をまつしかない。しかし彼らは寝たら死の状況。そしてパートナーは遭難死してしまった。

    この話で強烈に刻み込まれた一文は、身も知らぬ記者の誰かが頑張れよーっ、死ぬなよー、っと声かけたことがのちのちずっと生きる希望になったという箇所である。あぁ、誰かの一言がこんなに人を救うんだなと思った。私も山で困っている人がいたら声をかけよう。どんな無惨な状況でも。

  • 極限の極限。
    這いつくばってでも生還するという意思をこの本から強く感じた。そして、そのような意思があったからこそ生還できたのだとも思った。

  • 緊張感が伝わらない文章は、カタカナ表記の多用と間延びしたような表現が原因か。緊張感の無い文章の割りには悲惨な結末というアンバランスに、どう考えて良いか解らなくなるようなドキュメントだった。

  • 遭難から生還した人の手記って初めて読んだかも。
    経験した人にしかわからない壮絶さが伝わってくる。

  • 四川省の奥地、ミニヤコンカで遭難した男が、単身、奇跡的に麓まで辿り着き生還するドキュメント。
    擬音、短文の連続、単語、つぶやき、、、遭難の果ての感覚は、もはや文脈を形作ることができない限界点のよう。きっと、脈略のあることなど、朦朧として考えられないのだろう。断片化されていく思考。混濁する時間感覚。。。
    一気に読めてしまう秀作です。

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