大学生の男の子が、年上の女に夢中になっている。ヒデにとって額子はものすごく興奮させられる謎だ。とてもエロい文章なのに、頭のわるそうなヒデが幸せそうで、いっそ爽やかな感じ。ところが次の章では、ヒデは笑えそうなくらいひどい状況で、額子に捨てられるところだ。そこからゆっくりと、ヒデは壊れてゆく。
愛らしきものがあったのかさえ定かではない関係。でも額子との別れは、ヒデにとって、どこにも行きつかずにすむことのできる時間の終わりだったのだろう。それぞれに七転八倒した時間のあとに、ふたたび抱き合うヒデと額子。思ってもみなかった場所にたどり着いてしまったネユキ。最初から着くしかなかったところから動けない加藤。
この心に行き場はない。どこかにたどり着きたいわけではない。それはあなたのことではない。それでも、ひりひりとした心をかかえて隣で生きている人へ、寂しさと愛おしさをこめて口の中で転がす小石のように、「ばかもの」とよびかける言葉が響く。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本の小説
- 感想投稿日 : 2013年9月23日
- 読了日 : 2013年9月23日
- 本棚登録日 : 2013年9月23日
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