田村はまだか

著者 :
  • 光文社 (2008年2月21日発売)
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ススキノのバーで、小学校の同級生であった田村久志を「田村はまだか」と、一晩中待ち続ける男女4人、プラス、マスターの花輪晴彦。彼らによれば、小6のときに、この世の空虚さを指摘してしまった中村里香に対し、田村は「どうせ死ぬから生きてるんじゃないか」と語りかけ、その後も2人はまっすぐに愛をつらぬいて、いまでは豆腐屋の主人と女房であるという。そんな、小学生のときから渋い男であった田村に惚れこんだまま40歳を迎えた4人は、胸をときめかせつつ、一晩中彼の登場を待っているのだ。
そりゃ、いくらなんでも出来すぎだ。と言うと身も蓋もないようだが、小学校の頃に男子に失恋したのを40まで引きずってる女なんて、ないわな、やっぱ。
が、独特のリズムをもった文体はなかなかいいし、4人それぞれのエピソードもいい。腕白小僧みたいな雰囲気を残す池内暁が、へなへなと力を抜きつつ生きてるような二瓶正克に「全速力で走れよ、きみ」と言われるエピソード。「保健室のおばさん」である加持千夏と高校性男子の「キッド」が互いの脆さをそっと抱きとめる最後の会話。いやいや、女を知ってるポーズだけの坪田隼雄と「ブルースター」の脳内恋愛のエピソードだって、なかなかいい。というか、田村久志と中村里香の出来すぎた話よりは、脇のエピソードの方がよっぽどいいんではないか。
計算して構成しているのであろうが、あまりに出来すぎた男、田村と中村のカップルの存在って、この連作にほんとうに必要だったのかなあという気もする。私はどちらかと言うと、出来すぎてて気持ちがちょっと下がりましたけどね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の小説
感想投稿日 : 2014年2月27日
読了日 : 2014年2月12日
本棚登録日 : 2014年2月27日

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