フランスの刑務所に、コルシカ人とアラブ人の2大勢力があって、アラブ人でありながらコルシカ語を話す若者がのしあがっていく、という基本的な骨格が、まず面白い。
最近の移民であるアラブ人たちの数がいくら多くても、コルシア・マフィアのドンは長年にわたって看守を手なずけ、刑務所を実効的に支配しているが、政治犯の島外収監政策が見直されたのをきっかけに、しだいに影響力を失って焦りはじめる。一方で、「アラブ人」と呼ばれている中東やアフリカのイスラム教徒たちは、着実に塀の外で勢力をのばしつつある。
このパワーダイナミズムの変動のなかで、主人公が自ら能動的に仕掛けるのは、ほんとに最後になってから。後ろ盾をもたないトロくさいアウトサイダーが、権力者の「梃子」として利用されることにより、逆に権力の結節点となって力を操るようになっていく過程が、たいへんに面白い。
しかしこの映画のもっとも魅力的な部分は、主人公と彼がはじめて殺した男との親密な関係だ。自分を殺した男を、セクシュアルな愛情をこめたまなざしでみつめ、首の傷からふーっと煙を吐く死んだ男。主人公はこの死者の加護を受けてか、預言者めいた力を得ることになるが、それは主人公が犯罪者として成長したときに失われてしまったのだろうか。長すぎるし、いまいちよくわかんないところも多い映画だが、鹿をはねるところとか、魅力的なシーンが多くて印象に残る。
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- 感想投稿日 : 2013年4月25日
- 読了日 : 2013年4月24日
- 本棚登録日 : 2013年4月25日
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