泣き虫弱虫諸葛孔明

著者 :
  • 文藝春秋 (2004年11月25日発売)
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本棚登録 : 462
感想 : 96
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 ユニークなキャラクターによる新解釈の「三国志」。でもそれだけじゃ、この本の魅力の半分しか説明できない。

 三国志をちょっと「普通」の目で見直してみると、いろいろ間尺に合わないことがいっぱいある。それを無理矢理、筋の通る物として考えると……なんと、こうなっちゃいました、という具合にキャラクターが作られているのがミソなんである。たんに荒唐無稽のキャラクターをポンとひりだしたわけではなく、「書いてあることを素直に読むと、こういう人だったとしか思えない」という仕掛けを上手につくっているのがユニーク。読む人によっては、三国志はこんなに別の面が出てくるのか……著者の意地悪な観察眼に脱帽である。

 諸葛孔明だけに限らず、劉備・関羽・張飛も負けず劣らずの奇人・変人。それでいてものすごく生き生きとしたキャラクター描写。まさに「酒見節」とでもいいたくなる、軽快でうんちくある地の文で。爆笑しつつページをめくり、残りのページが少なくなるのがほんとに惜しくなる。著者の第一作『後宮小説』もおもしろかったが、この本はその直系子孫というかんじ。ぜひぜひこの路線でもっと読ませて欲しい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2014年3月30日
読了日 : 2005年3月30日
本棚登録日 : 2013年5月19日

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