「墜落現場」に続いて、結局こちらも読んだ。
タイトル通り、日航機123便墜落事故で亡くなった方たちの遺体についてのノンフィクション本。
墜落現場や現場から遺体を探して安置所へ運ぶまでの話はほとんどなくて、あくまで安置所になった体育館での話がメイン。警察官、医者、歯科医、看護師の葛藤と闘いの日々。
五体が揃った完全遺体はほとんどなくて、ほとんどの犠牲者はばらばらになった状態で、例えば右手だけとか、前頭部が欠損した顔と首の皮にかけてとか、文章で読んでいるだけでも想像を絶するような姿の描写が隠すことなくされていて、腐っていく遺体の臭いやわいてくる蛆についてもきちんと描かれている。
だから読んでいるだけで辛くなったり気分が悪くなる人もいるかもしれないけれど、これが現場の人たちが見た事実なのだということは分かる。
遺族はどんな形であっても亡くなった大切な人を連れて帰りたいと願う。それがたとえ骨の一つや歯の一本であっても。
事故から数ヶ月が過ぎてようやく身元が判明して遺族に渡った遺体もある。
日本人はとても真面目な気質である、という国民性も、かなり関係していることが分かった。国や宗教によっては「この事故の状況なら亡くなったでしょう。そして神の元に行ったのですから遺体は探さなくてもいいです」という外国人もけっこういたそうなので。
一人でも多くの遺体を、それがたくさんに分かれてしまった部分であっても、遺族の元に返したい。関わった多くの人たちは、その思いだけを元に、自らもギリギリの状態でその日々を闘い続けた。
そして今現在でも遺族と働いた人たちの間で個人的な交流がなされていると知って、人と人の縁を思って胸が熱くなった。
一応私も生まれてはいたけれど全く記憶には残っていない事故のことを、発生から30年のこの年に詳しく知れて良かったと思う。
読んでいて辛くなったけれど、読んで良かった。
- 感想投稿日 : 2015年9月17日
- 読了日 : 2015年9月17日
- 本棚登録日 : 2015年9月17日
みんなの感想をみる