孤独な夜のココア (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2010年2月26日発売)
3.58
  • (126)
  • (253)
  • (275)
  • (57)
  • (15)
本棚登録 : 3215
感想 : 276
4

女たちの様々な恋のかたちを描いた12編の短編集。
歳の差恋愛、オフィス・ラブ、不倫、略奪、騙された恋、幼馴染etc
その時は想い合う、純粋な恋であっても、やはり一筋縄ではいかず、過ぎ去って思い返してみた時にちくっと胸が痛むような。
昭和53年刊行なので、感覚は今現在とは違うと思う。20代も半ばを過ぎたら会社に居づらくなり、辞めて結婚しなければ肩身が狭くなる、というような風潮はおそらく当時のものだけど、そういうのを抜きにすると、現代の若い女性たちと何ら変わらない。
ドキドキしたり、失敗したり、また立ち直ったり。
自立しつつも惚れた弱みを見せる可愛らしい女たちがたくさん出てくる。

最後に急展開があって、その残酷さや悲しい余韻に切なくなる場面もあったけれど、どこかひんやりと冷たいところはとても“現実”だと思ったりした。
自分の身に起こった事実を俯瞰で見ているような、ちょっと冷めた目線とか。
過去の失敗は失敗だと認めつつも「後悔はしていない」と言い切る潔さは、けして強がりではないと感じたりもした。

「春つげ鳥」「ひなげしの家」「愛の罐詰」がとくに好きだけど、12編全部が愛おしい気もして、甲乙付けがたい。

女の目から見た、男の優しさ、弱さ、狡さ、逞しさ。器が大きい男と、小さい男。
分かってるのに好きになってしまう不思議。
全部ひっくるめて、独りきりの夜に飲む温かいココアみたいな、切なくて甘くて沁みる、そんな作品集。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2015年12月17日
読了日 : 2015年12月17日
本棚登録日 : 2015年12月17日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする