整形美女 (光文社文庫 ひ 18-3)

  • 光文社 (2015年5月12日発売)
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感想 : 25
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目鼻立ちくっきりでスタイル抜群の美人・甲斐子は、自分が美人だという自覚がなく、ある計画を元に20歳で全身整形をして地味な女に生まれ変わる。
一方甲斐子の同級生で地味な見た目だった阿部子も、同時期に整形手術を受けて元の甲斐子そっくりな美しい容姿に生まれ変わる。
整形してから十数年、全く正反対の容姿に変わった二人はどういう人生を歩み、どんな人間になっていくのか。

美容整形を扱った作品ってたまにあるけれど、これは単純に美容整形をして美人に生まれ変わった人間の物語ではなくて、そもそも美人とは?を問う物語。
見た目が整っていれば美人なのか?
でもよくよく考えてみると、見た目が整っていても美人とは思えない人もいるし、見た目は地味でも振舞いや内面を合わせて美人だと呼ばれる人もいる。

甲斐子と阿部子。これは聖書のカインとアベルになぞらえたもので、この二人の主人公に付随するような名前の登場人物も出てくる。
神から不当な扱いを受けてアベルに嫉妬し、最後にはアベルを殺したカイン。
この物語では元々甲斐子はとても恵まれた容姿をしているのに、なぜか異性から不当な扱いを受けるところから物語がスタートしている。
だけど甲斐子はとても慎ましやかで真面目な性格の持ち主でもあった。それが地味な見た目に整形した後、どんな風に変わっていくのか…。

美容整形がいまだに負というか“出来れば隠しておきたいこと”であるのは、嘘をついているような後ろめたさを覚えるからなのだと思う。
芸能人でも、素人でもはっきり分かるくらい顔が変わる人っているけれど、本人が堂々と公表するケースはほとんどない。逆に開き直られたほうが清々しいと思うけれど、そういう人はまだ少ない。
人にはそれぞれコンプレックスがあり、例えば胸が小さい人ならパッド、髪の毛が薄い人ならカツラ、背が低い人ならシークレットブーツなど、そのコンプレックスをカバーするものを用いたりする。
でもそれもやっぱり嘘をついているような後ろめたさから逃れられないから、必要以上にそのことに関して敏感になったりする。 
他人はさほど気にしてはいない、という客観性も、強いコンプレックスの前では通用しない。

整形によって一度美人を経験した阿部子の変化の仕方が素敵だった。コンプレックスをはね除け、自分の生き方を手に入れるということ。
美しさとは、そして本当の幸福とは。

余談だけど、年齢を重ねるにつれて内面って顔に出てくるから本当に気を付けなきゃいけないと思う。
つくりは綺麗なのに意地悪さが隠しきれてない人って、けっこういるよね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2016年4月17日
読了日 : 2016年4月17日
本棚登録日 : 2016年4月17日

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