北山氏の著作では2冊目、短編集。彼の創造した探偵「音野順の事件簿シリーズ」としてシリーズ化されている。
氏の作風として物理トリックにこだわるところは短編も同じであり、その都度ニヤリとしてしまう。それより今作の大きな特徴は作品の構成そのものにあると思う。
ひきこもりの名探偵音野順が探偵で、ワトソン役は友人であり彼の手がけた事件を小説にしている作家白瀬である。探偵とワトソン役のキャラ造詣には一工夫あり、過去の類型を見ないよう努力はしているのだろう。まぁ、ラノベ的であり、二人のやりとり、さらに岩飛警部などもからみ、ユーモアの点でも楽しめる。
しかしながら探偵の様式美に徹底的にこだわった作風であることが殊に嬉しく思えた読後感だった。様式美は解説で言及されており、作風を一言で表すなら正鵠を射ている。
事件が起きて不可思議があって、探偵登場、手がかりが発見、探偵の推理完了、一同揃ったところで種あかし、犯人確保、という一連の流れが共通して存在する。そこに氏お得意の物理トリックが絡む。お約束だけど飽きない、「寅さん」の世界がそこにある。お気楽に読めながらもクセになる味が確かにある良品であった。
読書状況:未設定
公開設定:公開
カテゴリ:
北山猛邦
- 感想投稿日 : 2014年9月9日
- 本棚登録日 : 2014年8月20日
みんなの感想をみる