日本の原風景ともいわれる岩手の「遠野」に行きました。タイトルこそ知ってはいたけれど読んだことがなかった「遠野物語」の故郷に行ってみよう、そしてそれを機に本も読んでみよう、と思ったのです。
古い文体ですが、一つ一つのお話はとてもコンパクトですし、遠野に住む人びとの口述を整理していることもあって、文体には意外とすぐに慣れました。遠野物語と言えば河童や天狗などが有名ですが、読んでみると伝承されているお話は様々で、しかもいずれも生々しくリアルなものばかり。長らくの間、自然豊かな山里で生きていた人たちにとって、摩訶不思議なことがいろいろあったんだろうなぁ、それを尤もらしいストーリーを作って納得していったんだろうなぁと感じました。
印象的だったのは、見た目や服装などが異なる人たち(外国人?、山の隠れ里のようなところに住んでいる文化の違う人たち?、ひょっとすると河童や天狗もそうなのかも)、人と違う能力を持った人、障がいがある人…などを、どう受け止めていたのかが少し伺えること。時に、現代の私たちから見れば差別があったんだなと感じられるエピソードもあるし、一方で、ひょっとすると今の私たちよりも自然に(どうしようもないことという、理屈ではない納得をしていたのかも)受け入れていた面もあるようで、興味深かったです。
また、分からないものだらけで厳しい自然に囲まれていたはずの世界を、なんと豊かな想像力で折り合いをつけ生きていたんだろうとも。遠野物語の世界を、読みながら自然に受け入れられる自分に、あぁ日本で育ったってこういうことなんだなぁ・・・と、アイデンティティを意識する、そんな読後感もありました。
- 感想投稿日 : 2019年9月17日
- 読了日 : 2019年9月17日
- 本棚登録日 : 2019年9月17日
みんなの感想をみる