貧困の戦後史 (筑摩選書)

著者 :
  • 筑摩書房 (2017年12月13日発売)
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感想 : 12
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岩田正美の本は面白い。著者によっては、同じ内容の繰り返しになってしまっていることが多いがこの人の本は何かしら新しい着眼点がある。
この本では、戦後日本の貧困の「かたち」を素描している。「かたち」というこのふんわりとした語彙は厳密に意味を定めることができないかもしれない。しかし、著者の多年に渡る研究から豊富な資料をもとに、統計だけでは捉えられない、具体的な貧困のかたちが立ち上がってくる。
その結論として貧困対策への著者の立場を結論として引用する。「『自立』支援という政策目標は、個人の怠惰が貧困を生むという、きわめて古典的な理解に基づいている。だが問題は、怠惰ではないのだ。貧困を個人が引き受けることをよしとする社会、そうした人びとをブラック企業も含めた市場が取り込もうとする構図の中では、意欲や希望も次第に空回りし始め、その結果意欲も希望も奪いさられていく。だから問題は、「自立」的であろうとしすぎることであり、それを促す社会の側にある。」(pp324~325)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会福祉
感想投稿日 : 2020年7月4日
読了日 : 2020年7月4日
本棚登録日 : 2020年7月4日

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