いまこそ「小松左京」を読み直す (NHK出版新書 629)

著者 :
  • NHK出版 (2020年7月10日発売)
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本棚登録 : 135
感想 : 11
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NHKEテレ「100分 de 名著」の「小松左京スペシャル」で解説者を務めた宮崎哲弥氏のテキストを大幅改稿。「100分 de 名著」放送時の薄いテキストを持っているので、特に読まなくてもいいかなぁ・・・なんて思ってたんですが、目次を見たらすっごい加筆されていて、書き下ろしの第2章で鴨が大好きな「果しなき流れの果に」を取り上げていることもあり、速攻買いました!
「100分 de 名著」で取り上げた「地には平和を」「日本沈没」「ゴルディアスの結び目」「虚無回廊」に加え、「戦争はなかった」「ヤクトピア」「果しなき流れの果に」「神への長い道」「彼方へ」「岬にて」「結晶星団」「雨と、風と、夕映えの彼方へ」についての解題も追加。めちゃくちゃ読み応えがあります。古めの作品を中心に取り上げてくれているのも、古いファンとしては嬉しい限り。

哲学者であり社会学者でもある宮崎氏の小松作品解題は、実に刺激的で知的興奮に満ち溢れています。
もちろん、一個人の考えであって、様々な解釈が可能なところが小松作品の醍醐味の一つでもあるのですが、鴨的に宮崎氏の文章はとてもすんなりと腑に落ちるところ多く、圧倒的な知的大伽藍を築くかのような重厚な小松作品の一端を少しでも理解できたのかな、と思いました。狭義の自然科学だけでなく、宗教学や哲学、歴史学の知識と知見も総動員して解題にあたる宮崎氏の文章は、素人には難しいところも多いです。が、それぐらい脳みそとイマジネーションをフル稼働しないと、小松作品の魅力は伝わらないのもまた一つの事実。改めて、とんでもないパワーを持った作家だったのだなと気づかされました。

本棚に並んでいる小松作品、久しぶりに再読してみようかなー。これだからSF者はやめられません!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF(その他)
感想投稿日 : 2020年10月20日
読了日 : 2020年10月16日
本棚登録日 : 2020年10月4日

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