深緑野分さんの「ベルリンは晴れているか」という小説で、主人公の女の子が小さな頃から肌身離さず大切にしていた本がこれ。
ドイツのある小さな町に住む母子家庭の男の子“エミール”が、ベルリンに住む叔母さんとお婆さんの家に遊びに行くことになる。エミールはお母さんから交通費と“お婆さんにあげるお金”を渡され、「絶対になくしちゃだめよ」と言われて、一人電車に乗る。
ところが、電車で眠ってしまったうちに、そのお金が盗まれてしまい、エミールは“犯人はあいつだ”と目星をつけた、山高帽を被った男の跡を付けて、叔母さんの家の最寄り駅ではない所で降りる。
お婆さんと従兄妹が予定の駅に約束の時間(18時頃)に待っていたのに、ほったらかしで、犯人を追いかけ、そこで出会った男の子たちが“探偵団”を結成し、犯人探しを手伝ってくれた。エミールは正直、「お金が盗まれて良かった」と思ったくらいワクワクする冒険をした。
話の展開が面白いかどうかより、「子供たち一体何時まで遊んでるの?」(遊びじゃないけど)というほうが気になった。だって、お婆さんたちと駅で会うはずだった時間が18時で、それよりもあとから始まった探偵ごっこでしょ。で、調べてみるとドイツの夏は日が沈むのが22時半くらいで20時、21時頃まで子供たちが外で遊び回っているらしい。ふーん、そんな時間にリアルどろ警?リアル逃走中(のハンター側)?確かにワクワクするかもしれない。
どんでん返しなどは無くて、子供たちが追いかけていた男が本当に犯人で、捕まえた子供たちは警察に褒められて、賞金までもらうという、“子供は善良”という人生観にたったハッピーエンドで、今の大人の私には物足りなかった。けれど、1928年に書かれたこの児童書をナチスの時代にも肌身離さず大切にしてきた「ベルリンは晴れているか」の主人公のことを思うと感動する。
- 感想投稿日 : 2022年5月9日
- 読了日 : 2022年5月9日
- 本棚登録日 : 2022年5月9日
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