面白くなってきましたね。
この巻では大きな“別れ”が四つもあります。
まずは正妻の葵の上。
源氏との子を出産の時に、六条御息所の生霊に苦しめられて亡くなってしまいます。源氏は今まで葵の上に対してつれなかったくせに、亡くなる間際になって「いつものように強気でない自然な姿が艶めかしい」だとか思い、亡くなった後は本当に落ち込みます。そして、葵の親元の左大臣家の人々は「これで源氏と縁が切れてしまった」と言って嘆きます。
次に六条御息所です。御息所は源氏より少し年上の聡明で趣味のいい女性でしたが、気位の高さや嫉妬深さなどが次第に源氏をとおざけてしまいます。そして、源氏の若い恋人や正妻に対して生霊を出してしまうほどの嫉妬をいだき、そんな自分が嫌になって、斎宮となった娘と共に伊勢にくだります。その御息所と最後にお別れのをするときも、本当に悲しくしっとりとした場面でした。「今までほっておいたくせに、調子のいいヤツ!」とこんなときこんな人に対して思いますが、源氏は“悲しいふり”をしているわけではなく、本当に心から残念に思っているのです。
葵の上にしても、六条御息所にしても今まで当たり前のように居てくれた人が居なくなった時にその寂しさに気づくのですね。二人とも世間からみたら、美しいし、聡明だし、落ち度などどこにも無いのに、源氏は困難な恋にしか燃えられないたちだから、当たり前のように自分を求めてくる女性にはつれなくなってしまったのですね。人間とはそういうものなのでしょうが。
そして、3番目の別れは重大です。父であった桐壺帝が亡くなったのです。これにより、宮廷の勢力図がガラリと変わってしまいました。弘キ殿(漢字難しい)女御と故桐壺帝との息子が帝に即位しましたが、まだ若いので、弘キ殿女御を初め、右大臣家のやりたい放題になり、源氏や藤壺の宮や頭の中将や左大臣にとっては生きづらい世の中になります。
そして最後の大きな別れが、藤壺の宮です。藤壺の宮は故桐壺帝が自分が亡き後も東宮を後見できるようにと、中宮の位を与えられていました。が、東宮が実は桐壺帝との子ではなく、源氏の子であるという罪を自分の中にひた隠しに隠して(源氏は気づいてますが)、罪の意識に苛まれるのと、右大臣勢力の中で生きづらいのとで、出家してしまいます。義母である藤壺に誰よりも恋い慕い、過ちまで犯してしまった源氏はショックで、自分まで出家したい気持ちになります。
今まで、若宮としてやりたい放題だった源氏を取り巻く環境がガラリと変わってしまった中で、新しく生まれた命があります。
一人は藤壺の宮と桐壺帝の皇子とされるが実は源氏との子である東宮(後の冷泉帝)です。あまりにも源氏そっくりで、世間に事実がバレないかとヒヤヒヤします。右大臣家の世の中になり、後見人であったはずの中宮(藤壺)も出家してしまって、この後どうなるのでしょう。
もう一人は夕霧。これは源氏と亡くなった葵の上との子です。これも「目元が東宮そっくり」と書かれています。ということは源氏にも似てるということですね。父が亡くなり、自分が二人の息子の父となった源氏。今後の物語が楽しみです。
それから、新しい女性との関係も。
一人は、若紫。巻一で、北山のお寺から連れてきた幼女。藤壺の姪にあたり、藤壺そっくりなので、二条院で親代わりとなって育てていた娘。ようやく、少し大人びてきたころ、事実上結婚します。まだ葵の上が亡くなって間もなかったのに、これはアカンでしょう。若紫もショックでした。でも源氏にとっては人が亡くなって悲しむのも人を恋することも全力というのか。容姿、能力、性格において欠点ゼロだというだけなら面白くも何ともないのだけれど、全力で振る舞うことによって、時に「末摘花」との失敗談があったり女の人を出家させるほどの悲しみを負わせてしまったり、嫉妬をかったりするから物語を面白くしてるのでしょうね。
あと、朧月夜の姫君。宿敵弘キ殿の女御の妹であり。大胆にも右大臣邸で逢瀬を重ねていたら、右大臣に見つかってしまいました。これからどうなることでしょう。
それから最後のほうにチラッと出てきた、麗景殿の女御の妹の三の君。これはこの後、花散里という重要な女性になるらしいです。
気になる人物がいっぱいです。こんなに面白くなっているのに、まだ10巻中の2巻目です。まだまだ波乱万丈ですね。
- 感想投稿日 : 2022年12月22日
- 読了日 : 2022年12月22日
- 本棚登録日 : 2022年12月22日
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