船に乗れ! 2 独奏 (小学館文庫 ふ 10-8)

著者 :
  • 小学館 (2016年6月7日発売)
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感想 : 14
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 後半はキツかった。
 前半は絶好調だった。
 南さんとお付きあいを始め、毎日音楽や演奏について熱く語りあい、「二人で一緒に芸大に行ってデュオを組む」という夢も語り合う。
 演奏のほうでも二人とも学校のオーケストラの第二バイオリンとチェロのそれぞれトップを任され、パートを引っ張っていく存在に。さらにサトルはフルートの貴公子伊藤君から、文化祭でバッハのフルート・ソナタの伴奏を頼まれ、美人のピアノ講師、北島先生からもイベントでのデュオの相手を頼まれる。個人レッスンの曲もどんどんレベルが上がり、毎日が忙しくて、楽しくてたまらない。
 そして、極めつけはドイツ・ハイデルベルクへの短期留学。サトルが知らないうちに親族のうちで着々と準備が進められ、「夏休みにハイデルベルクに行ってこい」と突然、お祖父様から言われる。向こうには伯父夫婦がいて、面倒を見てくれ、チェロの先生も斡旋してくれていて、言うことのない留学。恵まれたお坊っちゃん。
 しかし、ハイデルベルクのチェロの先生に言われたことは「君は、暫く音楽を演奏してはいけない。音階だけを練習しなさい。」「君のチェロの弦は鳴っていたが、楽器は鳴っていない」。
大きな挫折。

 帰国すると、周りからは「音が変わった」と褒められるが、そんなことは耳に入らないくらい悲しい出来事が続く。自分が悪いのかどうかも分からない。理不尽で耐えられない出来事。そして、ムシャクシャして虚ろな心のまま罪を犯す。と言っても、警察に捕まるような犯罪ではない。傍目からは分からない、自分だけがずっと十字架を背負っていかなければならないような罪だ。
 前半はあんなに牧歌的で楽しい青春時代だったのに、急に大人にさせられたようだ。
 音楽あり、哲学ありの高校生活。こんなことを経て、サトルのチェロはサトルだけの本当の音楽を奏でることが出来るようになるのであろうか?俳優さんが自分の人生の波乱万丈を肥しにしているみたいに?
 第3巻が楽しみである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年10月18日
読了日 : 2020年10月18日
本棚登録日 : 2020年10月18日

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