進化論裁判: モンキー・ビジネス

  • 平河出版社 (1992年1月1日発売)
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感想 : 2
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創造科学、ID論を考える上で、邦訳された本としては外せない一冊。
内容は章立てで様々な角度からの問題を解説しており、創造論科学者の非合理さを指摘するというのが大半です。
一方で、なぜ科学立国たるアメリカで創造論者たちが幅をきかせてしまったのかという点についても考察します、上手いと思ったのは創造論を絶対だとは言わず進化論とあくまで並列に建前上であってもおいて、ではどちらを信じますか?とするところでしょうか(かなり意訳ですが)、こういうところでまさしく次に言うアメリカの世論が生きてくるのでしょう。

本の最後で筆者はアメリカにおいての進化論と創造論の争いは世論をめぐる争いであり知性的な論争ではないと述べています。
本書の中で挙げられたアンケートではダーウィンの進化論を信じる人は47%、信じない人は53%となっていて、これは最近の調査でもそう大差はなく、日本人から見れば驚くべき数字です。

そんな状態だからこそ、創造科学は一定の支持を得ているのだと思いますが、ただ実際には創造論に基づいた創造科学、ID論の主張をするひとは全体で見れば少数派のようです。これは1981年に行われたアーカンソー州裁判で、福音派やファンダメンタリスト以外のキリスト教者、教会が名を連ねていることからもそう指摘できます。なのでこれでアメリカ人は宗教バカばっかりと言うわけにもいかないでしょう。(もう少し素朴なものじゃないかと私は思います)
そして最近では、議会でとりあげられた反進化論法とも言うべき法律が審議されていますが、ほとんどの州では否決され政治と宗教の関係においては概ね自浄作用が働いたと言えそうです。

しかしそれでも思うのは、結局のところ宗教絡みで問題となるのは仏教、イスラーム、キリスト教問わず原理主義なのかということです。
宗教は文化の一形態に過ぎないと考えている私は頭ごなしの宗教批判はしませんが、原理主義はどうしても現代社会の価値観とぶつかるため問題になりますね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学読み物・疑似科学
感想投稿日 : 2009年5月1日
読了日 : 2009年5月1日
本棚登録日 : 2009年5月1日

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