謎手本忠臣蔵〈下〉 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2011年11月28日発売)
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感想 : 13
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『信長の棺』で、本能寺の変という日本史上のミステリーに新たな解釈を提示してくれた歴史作家、加藤廣。
しばらく作品から遠ざかっていたのですが、精力的に執筆している作家さんなのですね。
文庫本になった作品が上中下巻並んで書店に平積みされていたので、読んでみることにしました。
本作のテーマは、「忠臣蔵」。
発生当時から現代にいたるまで、「主君への忠誠」「団結力」といった日本人的な価値観において共感を呼んでいる、これまた日本史上の有名な事件です。
「何が刃傷事件の”本当の”原因だったのか」「なぜこれ程の規模の討入りが実行できたのか」といった”謎”に、これまでも多くの歴史作家が取り組んできました。
その謎に、新たな視点での解釈を提示したのが、この作品です。
全くの新解釈というわけではないようですが、この作家さんの作品を横断してのテーマである、「朝廷と武士との関係」を軸に、ストーリーが展開していきます。
主人公として、大石内蔵助とともに、幕府の”高級官僚”柳沢吉保を配し、将軍綱吉周辺のどのような事情が、この事件の展開に影響を与えたのかが、描かれています。
僕は忠臣蔵について、まとまった書籍を読んだのが初めてなので、興味深く読ませてもらいました。
また、5代目将軍綱吉(著者は好意的に描いています)の時代というものもきっちりと描かれており、歴史小説を読む目的のひとつ「この時代の空気をかぐ」という部分でも、楽しめる内容でした。
忠臣蔵について知識豊富な人には抵抗があるかもしれませんが、僕にとっては楽しめる作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2012年5月6日
読了日 : 2012年5月6日
本棚登録日 : 2012年5月6日

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