物理学の世界で有名なファインマン先生の自伝エッセイ。
学生時代の話に始まり、原爆の研究、いわゆるマンハッタン計画に携わっていた期間の話、教授時代の話など、面白いエピソードに事欠かない。
ファインマン先生の、ユーモア好きでいたずら好きな人間性が垣間見えるエピソードが多く、こういう人に学問を教わることができた学生は羨ましいと思う。
ファインマン物理学は名著と言われているが、ついぞさぼり癖の大学生活を送ったせいで、いまだに読んでいない。
思い返してみれば、自分が研究開発の道に進まなかったのは、大学時代に科学の面白さをイマイチ実感できなかったからだと思う。
それは、大学の講義や教科書が、理論の伝授に偏っており、具体的にそれが現実世界とどのように関係しているのか理解できなかったからではないか。
本書の中のブラジル時代のエピソードでは、ファインマン先生が教えたブラジルの大学の学生は、教科書に書いてあることをコピーして暗記することはできるが、その理論は世界をどのように説明しているのかを、理解していないという記述がある。
本書の中での具体例では、学生は「物質が砕かれたり擦られたりした際には摩擦発光と呼ばれる現象が起こり、発光する」という知識はあるが、暗室で砂糖を砕いたときに砂糖が光ることを知らない。
さらに言えば、この現象は液晶ディスプレイやLEDなど現代の光に関する技術において必須となっているが、そのような対応関係を認識できていないということだ。(もちろん私も本書を読むまでそんなことは知らなかった)
線形代数はどのような意味あり何に活用されているのか、微積は?熱力学は?電磁気学は?・・・科学に興味を持つためには、数式を覚えるのではなく数式が世界をどのように表現しているのか理解し、そして自分の手を動かし、実験したり工作してみることが不可欠だ。
もう少し早くこのような本を読んでいたら、自分の人生も変わっていたかもしれない。
- 感想投稿日 : 2019年6月4日
- 読了日 : 2019年6月4日
- 本棚登録日 : 2019年1月18日
みんなの感想をみる