昭和史 七つの謎 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2003年1月15日発売)
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本棚登録 : 344
感想 : 22
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昭和史前期から中期にかけての謎を解明する本。
が、どうにもいかん。まず一つは推測が多いこと。推測そのものは構わないのだが、きちんとしたデータ(可能であれば第1級史料)を提示せず、誰かの書いた本や本人に聞いた事をベースとして進めているのです。まぁ、実物なんて簡単に見れるものではないから仕方ないとは思うけど。
次に一つ目にも書いてあるけど、本人に聞いた話というところ。人間の記憶というのは非常に曖昧で、そう聞いたと思っていても時間がたったり、マスコミなどでいろいろ情報を受けたりして変化してしまうもの。うっかりすると、夢と現実が混同してる場合すらあるわけです。本人に聞いたから間違いないってのは非常に危険だと思います。
三つ目、南京で大虐殺があったという認識。いまでは、ほぼ否定されている南京大虐殺を肯定しているのは問題かと思います。下手なことを書いて単行本に収録されなくなった漫画も存在していますからね。年代でいろいろ数値が変わったり、偽物の写真しか出てこないものが「歴史的事実」ってのはまずいかと思います。研究者であるならその辺はちゃんと把握しておかないと。
あとは気に食わない点もいくつか。2.26や5.15が文化大革命と同列に扱われていること。確かに両方とも「改革」ではあったとは思いますが、2.26も5.25も一般市民の虐殺は行われていないし、ほぼ無差別のホワイトカラーの抹殺も行われていないわけで、同列に扱うのはどうかと思うわけです。
あとこの人日本人なのかな?って思う表現がしばしば見受けられますね。最期の特別編の皇居前の「空白」を疑問に思うところとか。日本には「広場」って文化が存在しないわけだし。まぁ研究者だからいーのかね。
北海道がソ連に占領されていたらって部分とか、結構納得できるものもそれなりにはありました。中央で見てるという立場で書いているみたいですけど、微妙に傾いてる気がするんですよねぇ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2005年8月28日
読了日 : -
本棚登録日 : 2005年8月28日

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