ブクログ様献本。
この世の喧騒から離れ暮らしたいと考え、熱海らしき場所に引っ越した語り手の随筆風意識の流れ小説。
語り手は「超然」というキーワードを手に入れ、そのように生きようと心に決めるが、何ということはない日常の人々や風景や事物に囚われ、勝手に疎外され、妄想は肥大化し続ける。
自由自在に逸脱する文体や過剰な自意識で世間とのズレを執拗に描いていく様は滑稽。そして妄想に行き詰まった時は、風景としての自己を認識することで平静さを取り戻すことの繰り返し。
とにかく、その自意識が生み出す妄想が本当にくだらなく、瑣末なことからどんどん飛躍していくのだが、自分自身もこのようなくだらない妄想に囚われて何も起こらない日常を過ごすことが多いので、ホトホト身につまされる。
そんな自意識の自画像はみじめだが、笑わせてくれ、どこか安心させてくれもする。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2010年11月8日
- 読了日 : 2010年11月8日
- 本棚登録日 : 2010年11月8日
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