現代哲学というとフランスのポスト構造主義がなんとなくおしゃれな感じで、英米の哲学というと、相変わらず、堅苦しい分析哲学とか、言語哲学というイメージがある。
というわけで、敬遠していたのだが、最近、ウィトゲンシュタインの「哲学探究」の問題意識に関心があって、その延長線上にあるものとして、ちょっとアメリカの哲学状況にも目を向けてみようかなと思い始めた。
というところで、最初にあたったのが、この「世界制作の方法」なる本。基本的には、分析哲学や言語哲学、科学哲学、認知心理学などをベースとしているのだが、「世界制作」というタイトルからして、ぶっとんでいる。
で、中をみると、世界は複数のヴァージョンであり、どれが正しいわけではない。という徹底的な相対主義だし、ヴァージョン、ヴィジョン、レンダリングなど、言葉づかいもなかなか刺激的で、面白い。
基本的には、実在とか、認識とか、哲学の中心主題を巡る本なのだが、かなり芸術論的なパーツが充実していて、楽しい。で、その美学的なパーツと形而上学的なパーツがまさに同一の主張であって、要するに「科学」も「芸術」もどちらが「正しい」というわけでもないということを本の構成としてもまさに示したというところ。
個人的には、世界はヴァージョンであり、他のヴァージョンの組み合わせとか変形でできる。が、オリジナルなヴァージョンがあるわけではない。という世界観は、かなり共感できる。
というのは、80年代に洋楽聴いていたときに、やたら同じ曲のヴァージョンが出てきたり、曲の引用だとか、引用の引用といった現象があからさまになされている状況があって、そのときに、なんとなく「世界はヴァージョンだ」と思ったことがあるので。。。。
というわけで、米国の現代哲学もしばらくお勉強してみようという気になった。
もちろん、この本読んで、本当のところ何が分かった訳では、全然ないけどね。(読んでも全然分からないけど、なんだかそれなりに賢くなった気になるのは、フランスのポスト構造主義と同じ効用がある)
- 感想投稿日 : 2017年5月3日
- 読了日 : 2008年12月22日
- 本棚登録日 : 2017年5月3日
みんなの感想をみる