冬の光 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋 (2019年3月8日発売)
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本棚登録 : 34
感想 : 6
4

ついにやってしまった。国内線に搭乗してから意気揚々と読み始めたが、40ページ目あたりからこの本は以前に読んだことがあると確信した。30ページ目まで読んでもはっきりしなかったので、記憶力はかなり悪いのだろう。そもそもこの読書日記は同じ本を繰り返し買うことを防ぐ目的でつけているので、大失態である。あとで調べると5年前に読んでいる本だった。それでも読み進めて160ページ目まで来た。本屋で買ったのは、篠田節子+四国遍路に惹かれたからで、どれほど両者が好きなのだろうと自分で思う。読書を中断しなかったのは、ストーリーをほとんど覚えていなかったので、新鮮に面白く読み進めたいと思ったのと、細部の表現に魅了される部分が多く、単純に楽しいからだと感じたからだった。遍路でのエピソードも参考になり、実際に著者が遍路道を訪れて感じたことがベースになっており、自分も体験したいと感じた。
160ページ目から最後までは一気に読んだ。先の展開が全く予想できないというのは読み進めるにあたっては刺激的だが、5年前に読んだ内容をほとんど覚えていないのはショックだった。今後の生活を考えると不安になる。改めて感じたのは、著者の卓越した展開力と、細かな気を引く表現だった。東日本大震災と四国遍路の現実、女性の生き方、バブル崩壊後の流れの変化などのテーマが折り重なって興味は尽きない。特に、遍路に関する考察はとても納得感がある。蛇足になるが、この作品を映像化するのであれば、女性の主人公はシシドカフカだと勝手に5年前からイメージしている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年3月24日
読了日 : 2024年3月24日
本棚登録日 : 2024年3月24日

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