藝人春秋

著者 :
  • 文藝春秋 (2012年12月6日発売)
3.87
  • (117)
  • (183)
  • (119)
  • (20)
  • (5)
本棚登録 : 1197
感想 : 181
4

芸人が少ない! というのは置いといて、芸能界の異能力者たちの列伝といった趣があって楽しい。


水道橋博士さんの番組は、かつて『博士の異常な鼎談』とかを楽しみに観ていて、その「変な人」を活かす手腕には舌を巻いたけれども、今作ではそれが文字情報になっていて、ムチャクチャなエピソードの数々が惜しげもなく披露されていてとても読み応えがあった。


ちょっと意外だったのは、岡山出身でブルーハーツやハイロウズの甲本ヒロトと同じ中学に通っていたということで、そのエピソードはちょっと読んでて涙腺が刺激されまくりだった。心に師匠を抱えている人の話や、中学の頃は疎遠だったのが、縁によって再開して、最初はスターダムの度合いに差があったけれども、それがどんどんなくなるところとか、時代の流れみたいなところを強く感じさせられた。あと、巻末の『龍馬伝』の児玉清を観た博士の子供が言う言葉とかも、涙がどんどん出てきた。


個人的に面白かったのは、芸人を採り上げた話よりも、テレビの周辺で蠢く「芸人ではないけれども異能の持ち主」たちの話。草野仁、ホリエモン、湯浅卓、苫米地英人、テリー伊藤のエピソードは最高すぎる。湯浅卓と苫米地英人のシンメトリーな構造とかも上手いし、テリー伊藤の情景が目に浮かぶようなテレビ業界の一人修羅場とか、読んでて笑い転げてしまった。


湯浅卓はテレビに出ていたのを観て「胡散臭い人が出てきたな~」と思っていたけれども、希有壮大なホラ話かと思いきや、意外にバックボーンがしっかりしている人なんだな~とはじめて知った。でも、あの苫米地英人と同じことを言ってる(というのは博士の文章操作もあるだろうけれど)のを読んで、アメリカでバチバチやりあうにはこういうデカくて希有壮大な山師的発言をしてこそ、あそこでは大きな仕事を任せられるのかなぁ……と、映画『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』なんかを思い出した。


でも、やっぱり採り上げられている人数が少ないかな~と思った。もっといろいろな列伝が語れるはずだし、ちょっと(章立てをはじめとして)散漫なところが垣間見られたので、この本の評判を勢いに、本腰を入れて『芸人春秋』の先の『芸人史記』や『芸人三国志』を書いてほしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2013年3月9日
読了日 : 2013年3月9日
本棚登録日 : 2013年3月9日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする