憑神 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2007年4月25日発売)
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感想 : 421
4

面白かった
落語のような設定・展開から、最後は武士としての矜持、生き方、死に方を語る物語。

ストーリとしては、
幕末の江戸。
戦国時代に徳川家康の影武者としての役割を担った先祖をもつ下級武士の次男、別所彦四郎が主人公。
ある夜、酔いに任せて小さな祠に神頼みしたところ、実際に現れた神様が貧乏神、疫病神、そして死神。
また、この神様たちの人間界の外見が災厄と全く反対で面白い。
貧乏神は裕福な商人
疫病神は横綱級の力士
死神はいたいけな幼女

それぞれの神様からの災厄を受けながらも、「宿替え」手法を用いて、ほかの人に災厄をふってしまいます。
しかし、死神の災厄の「宿替え」はさすがに人にふれない。
この神々との掛け合いが落語のようにドタバタしながらも、後半の死神との関係の中で「死に方、生き方」「もののふ」としての在り方を示していきます。

「人間はいつか必ず死ぬ。だが、限りある命が虚しいのではない。限りある命ゆえに輝かしいのだ。」
「おまえも、九頭龍も、伊勢屋も、神々はみな力がござるが、人間のように輝いてはおらぬ。死ぬることがなければ、命は決して輝きはせぬのだ。」
そして、死神の「宿替え」を鳥羽伏見の戦いで一人逃げ帰ってきた慶喜に振ることを提案されるも、彦四郎はそれを拒否、影武者としての本懐を成し遂げることを選択します。

「限りある命が虚しいのではない。限りある命ゆえに輝かしいのだ。武士道はそれに尽きる。生きよ」

胸が熱くなります。

お勧め

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2020年10月25日
読了日 : 2020年10月25日
本棚登録日 : 2020年10月25日

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