恥辱 (小学館文庫 ア 4-4)

  • 小学館 (2007年11月6日発売)
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感想 : 7
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カーリン・アルヴテーゲンは、1965年スウェーデン生まれ。
二作目の『喪失』で、北欧推理小説賞を受賞。サイコサスペンスの女王ともいえる存在の作家らしいです。

邦訳は四冊あり、本書は邦訳で一番新しい書物です。

私は本書以前の三冊、『罪』『喪失』『裏切り』は読んでおらず、はじめてのカーリン・アルヴテーゲンです。

主人公といえるのは、ふたりの女性。

ひとりは、38歳の女医。仕事で成功し何不自由ない生活を送っているように思えるが、兄の死がいつまでも心から離れずトラウマになっている。
もうひとりは、異常に太りすぎ部屋から出ることもできない犬と暮らす50代の女性。彼女を手助けしようとしてくれる人たちを辛辣な言葉で傷つける。

この全く違う女性ふたりの女性のことが交互に綴られる。

異なる人生を歩むふたりのことを知るにつけ、彼女たちの共通のキーワードが浮かび上がってくる仕掛けになっている。
でも、彼女たちの人生は容易には交差しない。

彼女たちの人生に登場する脇役もすごい。
家族を殺し、終身刑を受け刑務所で過ごしている肥満女性の幼友達。
彼女のことなどすっかり忘れていた日常に届いた一通の手紙。その手紙を受け取った時から肥満女性の人生に変化が訪れる。
皮肉を並べ、悪口をいい、傷つけてヘルパーを追い出すことに生きがいを見出していた肥満女性だが、
彼女の前に現れたヘルパーの女の子今までにないタイプの子。
そのヘルパーの女の子の母親と女医は知り合いで、また女医の人生を変えてゆく出来事が起こる。

人生の成功とは何か。捉われていることは果たして捉われるべきことだったのか。
毎日の積み重ねの小さな出来事は未来に関連性があるといういわれてみれば当たり前のことが、過去と未来の自らの剣の先をつき合わせなければ気付かないこともある。

過食で人の手を借りなければ生活できない中年女性、頑張り続け社会的地位や経済的成功を手に入れ、それでも不安と孤独のなかで頑張り続ける女医。
現代に生きているふたりの女性は、とても身近に感じられる。焙りだされる心の闇に、私たちも現生活を振り返り、何かかんじなければならないのかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年3月17日
読了日 : 2012年3月17日
本棚登録日 : 2011年10月1日

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