東京どこに住む? 住所格差と人生格差 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2016年5月13日発売)
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感想 : 53
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かつては、東京の西側(皇居を中心にして西側)の方面に住居を構えるのが定石だったそう。郊外の一軒家にしても団地にしても、東京の西側が理想とされたのだ、と。「西高東低」なんて言われ方がしたくらいだそうですが、いまや、東京中心地や東側の下町方面へ、人口移動が盛んになってきているみたいです。そこには、職住近接という流行が存在する。さらに、職住近接を肯定する、集積の論理が働いているようです。集積の論理の点ではアメリカのポートランド(アメリカには2つポートランドがありますが、オレゴン州のほう)を例に解説されています。そこでは、住んでいる人たちの意識が「本当にいいもの」志向で、なおかつ、それを自分たちでやっていこうとうしている。根本に自主性や自律性があるんです。そして、そんな魅力的な「本当にいいもの」の揃った町が、ぎゅっと自転車移動圏内に凝縮されていて、買い物に便利なうえに楽しいし、異分野の人たちの密な交流からさらにおもしろいものが生まれたりする。集積の論理とは、そういった「かけ算性」の論理だと思います。本書では、また違った角度から語っている箇所がありますので、興味のある方は手にとって見てください。昔ながらの“閑静な住宅地”とは逆に「住宅地によいバルがあって」など、ほどほどに賑やかな住宅地の方に人々の好みがシフトしていってる、と本書にあります。そしてそういう集積の仕方が町の活性化の源だ、と。(この集積の論理を押さえないコンパクトシティ推進には意味はないのでしょう)働く場所、住む場所、食べる場所、買う場所。それらが近接してこそなんですよねえ、集積の論理っていうのは。静かなところが好きな僕はちょっと疲れそうだな、と思いました。本書ではほかにもさまざまなトピックを扱い、多角的に東京一極集中について述べている。いかにも「新書」というような読みやすさと軽さとまとまりのよさ。そして著者の情報処理に抜きんでた力をぞんぶんにいかした類の本、といった印象でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 説明文
感想投稿日 : 2020年6月14日
読了日 : 2020年6月14日
本棚登録日 : 2020年6月14日

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