新しい高校地学の教科書―現代人のための高校理科 (ブルーバックス)

  • 講談社 (2006年2月21日発売)
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4

岩石や鉱物からはじまり、
火山や地震とそれらに関連するプレートテクトニクスへと続き、
地表はどうやって変化していくものなのかについても考えていきます。
それから、生命の誕生の話へと場面は転換します。
地球環境の変遷をたどりながら、
どうやって地球環境が作用して生命が生まれ、進化してきたのかを古代から追います。
そこで語られる、古来から何度か地球が経ている温暖化と寒冷化にも話は及び、
気象や海洋についての知見についての解説へと繋がっていく。
最後に、太陽系と銀河や宇宙、
そしてビッグバン理論とインフレーション理論から宇宙の始まりについて学んで終わります。
構成がよく考えられていて、流れるように読んでいけます。

そればかりか、地球システムというものは、
陸・海・空・地下・太陽などのはたらきが相互に影響をして、
複雑にからみあって地球環境を成していることがわかり、
さながら、芸術的な奇跡のようにすら感じました。
一筋縄では出来ていなくて、だからこそ、しなやかで強靭でもあるし、
逆に繊細である、とも見ることができます。

トピックとしては、
恐竜のいた頃には二酸化炭素の濃度は今よりもずっと高く、
北極も南極も(今とは別の位置に両極があったのですが)凍てついてなかったことや、
大気をかきまわすジェット気流が台風なんて目でもないくらい強風だということ、
波は風が引き起こすこと、
人体を構成する元素の割合が、
生命誕生のホームである海すなわち海水を構成する元素の割合と似ていること
などなどがあったなあと浮かんできますが、
それらについてもさらに一歩、「なぜか?」のもとに掘り進んでいくので、
読み進めると「うーん!なるほど!」と深い息が出るくらいです。

興味深くもなかなか難しかったのは気象についての箇所で、
高気圧や低気圧についてはついていけても、
「コリオリの力」なんかがでてくるとてこずりました。
こういうところは、読解の論理力とイメージ力が問われるんです。

本書を読了すると、
世界のダイナミックさを垣間見ることができたその気持ちが、
宇宙の果てまで広がるような感覚を覚えました。
世界を知るということは、
もしかすると世界との一体感のようなものを
持つことができるようなものなのかもしれないです。
科学を勉強することで、ある種の宗教的な感覚が生じるんですねえ。
また、学ぶことの爽快感が得られもしました。
いろいろ学び直したり知ったりすることってやっぱりいいものですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 説明文
感想投稿日 : 2020年9月12日
読了日 : 2020年9月12日
本棚登録日 : 2020年9月12日

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