解説によれば、華氏451度は摂氏233度にあたり、紙が自然発火する温度だそう。ある意味、主人公ガイ・モンターグの中で何かが自然発火することの暗喩のようにも読めたりしそうです。主人公モンターグは焚書官であり、本を焼く仕事をしているのですが、ひょんなきっかけでそれまで見えていた世界がぐらつくんですね。そして痛みを伴いながら、個人のあたまのパラダイムがシフトしていく。そして、あるとき、本を手にしたことで人生が変わっていきます。本を禁じられた世界で生きている普通の人びとは、スピード狂で、テレビ狂で、空虚な日常を送っています。それまるで、この小説が書かれた50年以上前の時代から、現代を風刺しているかのようでもあります。本が無いという極端な設定にしたことで、本があることのメリットがわかるようになっています。また、本のメリットが意味すること、たとえば、暇ってものが大事だよ、という問いかけがありました。ここでの、「暇」は「退屈」とくっつかない「暇」のことです。考える時間、感じる時間、いやいや、ぼーっとする時間でもいいでしょう、それはそれで創造性につながりますから。そういった「暇」を、現代の騒がしさやスピードが隅に追いやろうとしている。そんな時代の相のスケッチのように読めました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2018年2月22日
- 読了日 : 2018年2月22日
- 本棚登録日 : 2018年2月22日
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