図南の翼 十二国記 (講談社X文庫)

著者 :
  • 講談社 (1996年2月5日発売)
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「風の万里 黎明の空」で登場した珠晶のお話

珠晶の物言いやら考えやら行動やらが実にラノベちっくで、そっち系を読み慣れた人にとっては安心感があるのではなかろうか?
あと、珠晶の強運っぷりも実にラノベ

今どきの長いタイトルなら「『王がいないなら私がなるしなかいじゃない』と、お嬢様が家出して昇山してみた件」
そして内容は「黄海の歩き方」閑散期バージョン
もしくは「昇山のススメ」とかそんなところだろうか

都会の裕福な環境で育った子と黄海という過酷で祖国を持たない人の文化や考え方の違い
王がいないから災害が頻発するし多くの人が困るというのは確かだけど
王がいなくても生きていこうと思えばいけるわけで、「国」の存在意義を考えさせられる
頑丘が言う、王が必要ならずっと閉じ込めておいて何もさせ無ければ有益な事もできないけど無益な事もできないという意見は、この世界にハマりつつある読者にとっては衝撃
でも遠甫が陽子さんに、国政は主に官がする事で王の役割は存在するだけで十分に役立っているみたいな事言ってたしな
延王の言ってた事もそうだし、結構な真理を突いている意見なのかもね
しかも最後に描かれている奏国の意思決定システムが正にこれで、王は実質的な決定権を持っていないと言うね
それで600年も国が続いているのだとしたら、結構な真理を突いている意見なんだろうなぁ

それにしても、この世界の王の選定システムにさらなる疑問が増えたな
27年前に王が亡くなって、20年前に麒麟が王の選定ができるようになった
しかしその時に珠晶はまだ生まれていないし、生まれても麒麟も迎えに来なかった
その間に国内のめぼしい人は昇山済み
つまりは王となるべき人が不在の期間が確実に存在するんだが、いいのか?

生まれた時に来いというのも無茶な話で、赤子のまま王になれるはずもない
ただ、何もできない王というのも上の理論で言うと最高の王なんじゃないか?とも思うけどね

それにしても、王の資質と王気を発するのは別という事ね
珠晶は元々王の資質を持っていたけど、麒麟に選ばれるには王気を発する必要があった
昇山の途中で王気を発したのが見えたので供麒が迎えに来たって事でいいのかな?

そうすると、陽子さんは景麒が迎えに来た時点で王気を発していた事になるけど、陽子さんはアノ酷い経験をしたからこそ王としての資格を身につけたと思うんだがなぁ
増々わからんなぁ


ってか、犬狼真君の存在がとても嬉しい
仙の格が高いのとか、里木の入手方法とかのやりとりを妄想すると、何だか微笑ましい気持ちになる
どこかの国のためではなく、妖魔と生きる人達のための存在でありたいという道を選んだんだろうなぁと妄想してしまう

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年3月24日
読了日 : 2021年3月6日
本棚登録日 : 2021年3月24日

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