母さんがどんなに僕を嫌いでも

著者 :
  • KADOKAWA (2013年2月28日発売)
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本棚登録 : 277
感想 : 46
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オープンなゲイでサラリーマンで人気ブロガーの歌川さんのコミックエッセイ。
虐待、という言葉を使うには抵抗があるけれど、ままならなさを子供にぶつけてしまう母との過去を、シリアスかつユーモラスにつづってある。
発売前から買おうと思っていたのをようやく買えた。

読んでいる間ずっと、枡野浩一の「他人への怒りは全部かなしみに変えて自分で癒してみせる」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4043594011という短歌を思い浮かべていた。
子供の自分や、似た状況の子供や大人だけじゃなくて、母だけでもなくて、あらゆる人を慮る。
頑張りすぎ系の人なのに、動けない人に向ける視線も優しい。
優しい強さを自分で育ててる。

「子供が変われば親が変わる」って考えは、うっかりすると子供に責任を押し付けたり、「鏡の法則」みたいになってしまう危険がある。
けれど、この本で語られるのは「自分で変えられる」「自分は変われる」という希望のひかりだ。
それも、「自分はこうやって成功したからお前も努力しろ」じゃなくて、「こんなケースもあるよ、だから大丈夫だよ」と励ましてくれる。
「理解力があるほうが先に気づく」というキミツさんは厳しくて優しい。

つらい話だけど、つらい本じゃない。
かわいそうねひどいはなしねで終わらないように、当事者が傷つかないように配慮してあるから。
そして著者自身が、自分で自分を育てて(まわりの人に恵まれてはいるけれど、周囲を受け入れてつかんで栄養にしたのはこの人自身だ)、ちゃんと幸せになれるってことを体現しているから。


私は、ダメな親なら捨てちゃっていいと思ってる。
親を変えるより、その努力を他に振り向けたほうが効率がいい。
だけど、捨てないのもアリなんだなって思った。
愛されたい渇望は私には理解できないし要らない感情だけれど、「死んでも裏切れない誰かを見つけること」は理解してみたいと思った。

これを読めて良かった。


手書き文字の筆跡がところどころ違うと思ったらツレちゃんの仕業か!
ほほえましい。愛にあふれた後書きもほほえましい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 手記・個人の記録
感想投稿日 : 2013年10月27日
読了日 : 2013年10月27日
本棚登録日 : 2013年10月27日

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