知るべき内容の本なんだけど狙いが定まりきれなくて納まりが悪い。
「中学生の質問箱」「在日朝鮮人ってどんなひと?」というテーマとの間にズレがある。
これは、在日朝鮮人という切り口から見る日本国についての本。
途中でやめようかと思ったんだけど、これは最後まで読まないと評価できないタイプの本。
国家と自分を混同してはいけない、というメッセージを主眼にしてくれればもうちょっと読みやすかったんじゃないかな。
読者として想定されているのは完全な日本人(国籍や人種について考えずに育つことが出来るマジョリティ)の子。
在日朝鮮人の子のための本ではない。
それでもたまに在日朝鮮人の子へのメッセージも出てくるのは、強く伝えたいという気持ちの表れか。
それはわかるんだけども、にじみ出る強い気持ちと若年層向けの中立的な解説の部分がうまく溶け合わない。
あいこくてきなタイプの日本人が気分よく読める戦略を立てるなり、解説に徹するなり、在日朝鮮人としての主張を強く打ち出すなり、方向性を定めてほしかった。
なんだか、強い個性を無理やり善人の枠に押し込めたせいでつまんなくなっちゃう子供向け偉人伝のような読後感。
せっかくいい本なのにもったいない。
もっとも、具体的な批判もできないくせにイメージだけで「偏っている」とのたまうようなタイプの人は、どれだけ配慮してもらっても理解したいことしか理解しないもんだけど。
政策の非道を訴えるために「良い被害者/悪い被害者」の罠にはまってしまっている部分があるのも気になる。
納税してるのに日本国籍の納税者と区別されるのは確かにダメだけど、人権は納税者やその子供「だから」与えられるべきものではない。
無条件じゃなきゃ人権じゃない。
文明化=欧米化(欧米経由の民主主義)というのも気になる。
福島の朝鮮人学校が校庭の除染補助から除外されていることに衝撃を受けた。
政治と関係ないことなのに人としてダメだろ…
日本に「帰化する自由」ってものは、『アシュリー事件http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4903690814』で書かれた「死ぬ自由」に似ている。
「する」方向でだけ語られる「自由」
- 感想投稿日 : 2012年3月27日
- 読了日 : 2012年3月31日
- 本棚登録日 : 2012年3月27日
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