権力とは使い方を誤れば、人一人の命など赤子の手をひねるかのごとく消し去れる。
それだけ強い権限があるということを、権力の側は自覚し適切に扱わなければならない。
逆に言えば、それができないものは権力を手にすべきではないのだ。
本書は「文庫X」としてさわや書店フェザン店(岩手県盛岡市)で販売が始まったものだ。
この書店は私も実際に利用したことがあり、この本を紹介したこの書店の慧眼に感激した。
話題になった本書を読み終わった当日、本書で挙げられていた渋谷暴動事件で手配中だった男(と思われる)が大阪府警に逮捕されたという報道があった。
警察の執念が実ったのだ。
しかし実らない事件も多いに違いない。
また、保身のために隠された事件もあるかもしれない。
警察、司法を取り巻く環境は大きく変化している。
警察官の現認だけでは弱い証拠にしかならず、GPS捜査も違法とされた。
自白についても、昔のような手法では公判維持すら危うい。
マスコミについても同様だ。
新聞、テレビ、雑誌といったメディアは、第四の権力であるのに一般人にスクープを抜かれ、マスゴミと揶揄される。
しかし、だ。
目的や存在意義を幾度となく問われ、揶揄されようとも、その権力が弱きもの、地位先苦しむ者に寄り添い、救おうとしている限り、その権力は決して無意味ではない。
本書は報道のバイブルと評価される。
私はそれ以上のものだと思う。
「権力を生業とするもの」すべてに宛てたものだ。
なぜ我われはここにいるのか、誰のために働くのか、己と向き合うために、この本はここに在るのだ。
- 感想投稿日 : 2017年7月15日
- 読了日 : 2017年5月23日
- 本棚登録日 : 2017年7月15日
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