Presents (双葉文庫 か 30-2)

著者 :
  • 双葉社 (2008年11月13日発売)
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人生における贈り物。
それは姿も形も様々。
ある人にとっては何でもない物事かもしれない、でも自分にとってはかけがえのないもの。
そんな大切な贈り物にまつわる短編12編。

『名前』
名前は両親から子供への初めてのプレゼントです、と言われる事がある。
近年はDQN、キラキラネーム、なんて言ってやり玉に挙がる事も多い。
確かにいくら何でもそりゃないよ、というもの(嘘か真かわからないが)もあるが、多くの場合、色々な思いが詰まっているはずだ。
だから迷信かもしれないけれど字画を気にしたり、やたら派手な名前になったりもする。
でもそこにある思いは、この子が幸せになりますように、そんな思いなのだ。

『鍋セット』
私が一人暮らしを始めたのは親と喧嘩したからだった。
出て行ってやるよ、と右も左もわからず引っ越しを始めた。
その引越しの荷物の中に母がこっそり鍋を入れておいてくれた。
その鍋でカレーを作り、夏の泊まり勤務だというのに朝から出しっ放しにして腐らせたり、大量のオカラ炒めを作ってしまったり。
この物語を読んでそんな幾多の失敗を思い出す。
私もいつか子供たちに鍋をプレゼントする日が来るのだろうか。
煮炊きをきちんと教えて、自活できる強さを与えてあげられるだろうか。
ル・クルーゼやバーミキュラ、ストゥブなんてかっこいいやつじゃなく、普通の雪平鍋や両手鍋とともに巣立てるように。

『絵』
怒りすぎてしまう母親。
これは私か?
「何を叱っているんだかわからなくなって、ただ泣かしたい衝動だけが残る」
そんな情けない母親だが、子供の描いた絵を見て泣いてしまう。
ごちゃごちゃした、子供のいる家特有の姿、汚い玄関、掃除してもすぐに汚くなる家。
でもそれはそこにみんなが住んでいるから。
今日は抱きしめてあげよう。
いや、今日だけじゃなく、明日も明後日も何度でも。
片付けて、叱って、汚れて、片付けて、抱きしめて。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2016年8月14日
読了日 : 2016年8月6日
本棚登録日 : 2016年8月14日

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