ジヴェルニーの食卓

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  • 集英社 (2013年3月26日発売)
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原田マハさんの画家4人にまつわる短編集。

『うつくしい墓La belle tombe』
アンリ・マティスのお邸に仕えたマリアの回想録。
ピカソがマティスの元を訪問し、楽しく食事をする場面は、二人が正反対の性格でありながらも、互いを労わり思い遣る関係であることが伝わってきて、温かい気持ちになった。

エトワールL'étoile
エドガー・ドガを師のように慕い、友好関係にもあったアメリカ人女流画家のメアリー・カサット。メアリーの回想によって、ドガとドガのモデルであった踊り子のマリーとの関係性、ドガの作品制作への執念が明かされる。
現代ではお金持ちのスポーツという印象が強いバレエだが、当時は、貧しい家庭の娘が、気鋭の画家のモデルとして報酬をもらうことを目的に、踊りのレッスンに通っていたということを初めて知った。また、これまでは美術館で裸体の女性を観ても、一枚の絵画として当たり前のように鑑賞していたが、この作品によってその背景を知ったことで、今後は、モデルとなっていた少女達の気持ちや画家達の気持ちを少しでも推し図りながら鑑賞できたらいいなと思う。

タンギー爺さんLe Père Tanguy
「タンギー親父」の愛称で、多くの新進気鋭の画家達の拠り所であった画材屋の店主の娘から、ポール・セザンヌに宛てられた手紙が、そのまま一つの章になった物語。
画材を買うお金もないほどの貧しかった画家達が、作品を生み出し、美術の世界に革新を与えることができた背景には、お金持ちのパトロンだけでなく、タンギー爺さんのような寛容で柔軟な商人の存在があったんだなと、温かい気持ちになった。

ジヴェルニーの食卓Une table de Giverny
クロード・モネとパトロンの娘であり、モネの助手として仕えたブランシュの信頼と愛情に満ちた関係を描いた物語。
モネの、仕事(絵を描くこと)に対して真面目で、家族への愛に溢れた穏やかな性格が伝わってくる作品。これまでの作品は基本的に画家はお金がないというイメージが多かったけれど、モネは時代が芸術に追いついてきた頃の画家だったこともあってか、裕福な生活を送れていた時期もあったことが食事や庭の描写から伺えて、生まれた時代でこんなにも変わってしまうものなのかと驚いた。モネとブランシュの心で深く繋がった関係性が温かくてほっこりさせられた。

どの作品も、それぞれの画家の個性を知ることができ、温かさも感じられる作品。
ただ、個人的には、『リボルバー』と『楽園のカンヴァス』を上回るまでは至らず。
短編でサクッといろんな画家の物語読みたい、という方にはおすすめです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(アート)
感想投稿日 : 2024年1月11日
読了日 : 2024年1月11日
本棚登録日 : 2024年1月4日

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