顔を失くした男の自己回復と、
他者との交流の窓を回復する目的であったはずの仮面が、
いつしかただ別の素顔を得るだけになる。
執拗に繰り返される自問自答と顔に纏わる考察が、
必死になればなるほど迫害的で妄想的な意味合いを強め、
ひどく歪んだ自己愛的な主観へと埋没していく様が怖いが、
それは蛭の巣窟になったからなのか。
それとも妻が指摘することが真実なのか。
男とその妻という形式を借りた、
これまた安部公房が描き続ける普遍的な人間の実存をめぐる物語に仕上がっている。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
安部公房
- 感想投稿日 : 2020年10月31日
- 読了日 : 2020年10月31日
- 本棚登録日 : 2020年10月31日
みんなの感想をみる