労働ダンピング: 雇用の多様化の果てに (岩波新書 新赤版 1038)

著者 :
  • 岩波書店 (2006年10月20日発売)
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ワーキングプアということが言われるように、フルタイム働いても生活保護給付よりも収入が少ない、ということが広がっている。派遣労働や請負労働、成果主義で崩壊する正規職員の雇用・・・によって労働力は商品化され、規制緩和やグローバル化のなかで必然的にダンピングされていく。これは選択の問題である。あるいは価値観の問題である。オランダや北欧は労働を商品化することをやめ、同一労働同一賃金の考え方を徹底し、短時間の正規労働者、ワークシェアリングを実現した。短い労働時間で、僕等日本人よりもずっと〈豊かな〉人生を手に入れ、そして生産性をも向上させた
 考えれば考えるほど無力感が広がる。日本はこのまま殺伐とした社会になっていくのだろうか。こうなってしまった原因のひとつにこの国の労働組合の問題が極めて大きいということが僕には感じられた。正規職員の既得権を守るだけで、パート職員や派遣職員と連帯せず、むしろ彼らとパイを「奪い合う」ことに汲々としている労働組合。労働運動が国民から見放されるわけである。経営者の言うように、いやむしろ積極的に「成果主義」というものを受け入れる労働組合に僕は絶望しか見ない。
 ただ、今となっては規制緩和、グローバル化のなかで、問題は個別企業ではどうすることも出来ず、きわめて政治的な、あるいは国民的コンセンサスが必要な状況になっているということが明確になる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2010年11月7日
読了日 : 2006年11月11日
本棚登録日 : 2010年11月7日

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