愛の旅だち (岩波少年文庫 3116 フランバーズ屋敷の人びと 1)

  • 岩波書店 (1981年1月22日発売)
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感想 : 5

《世界大戦》直前の1908、1910、1912年の三章。貴族階級の収入源の公債は植民地搾取で成り立つ。大英帝国のコアであった“Noblesse Oblige”。没落しゆくフランバーズ家の主=ラッセルの乗馬と狐狩りに耽溺も、それが陸軍力の根幹だからだ(Wチャーチルはボーア戦争記で「かつて戦争はスポーツの延長だった」と書いている)。主人公で12歳の孤児クリスチナは意外にも乗馬と狩猟が好きになった。彼女が馬丁ディックを凋落させるのはマークがその妹バイオレットを没落させるのと相似。色事は階級を分かち、固定するのだ。
表紙とおりの場面が出てきてビックリ。エンジン音だけでも(軍馬でなくて)慣れていない馬にとっては暴走の要因になるだろう。ウィリアムが飛行機に関心がるというのは出来過ぎのように思うが、馬に乗れないほど足を悪くしても(初期の)自動車の運転を覚えられた。「ブレーキがあるから大丈夫、すべての馬にもブレーキをつけるべき」は強烈な皮肉。ウィリアム征服王と源頼朝はいずれも(東西で)島国を統一し落馬で亡くなったのだった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年4月3日
読了日 : 2014年10月27日
本棚登録日 : 2019年4月3日

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