西洋の建築様式をなぞるのが精いっぱいだった明治の日本人建築家たちの後継として現れた第二世代。伊藤忠太、横河民輔、佐野利器・・・それぞれに独自性を打ち出した建築論を展開し、関東大震災を経て地域の区画整理から耐震構造の研究へと日本の建築は大きく躍進していく。
やがて世界的に起こるモダニズムの波に、抗うもの、乗るもの、巻き込まれるもの、様々な主義主張の建築家が生まれては消え、お雇い外国人に頼んでなんとか西欧っぽい建築を作ろうと苦心していた時代から見ると「遠くへ来たもんだ・・・」と思わず呟きたくなるような時代の変遷を感じる。
著名な建築家たちの関係性や時代背景などがわかり、それまでばらばらに脳内にあった建築家や建築が自分の中でマッピングされていくのが面白い。
ちょっとしたエピソード(村野藤吾の建築にナチスを意味するモチーフが掲げられていて、彼自身はマルクス主義だったという話とか)も興味深く、楽しく読んだ。
最後に藤森氏があとがきで書いているように「主観と憶測の楽しみ」の混じった本であるので、完全なる建築史の教科書としてしまうには偏りがあるのかもしれないけれど、読み物として楽しんだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
好奇心が満たされる
- 感想投稿日 : 2016年12月13日
- 読了日 : 2016年12月13日
- 本棚登録日 : 2016年12月13日
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