丹下健三、辰野金吾、伊東忠太、名だたる建築家が設計した建物に宿泊することをテーマにした紀行エッセイだ。
村野藤吾の佳水園や辰野金吾の奈良ホテル、渡辺仁のホテルニューグランドなど著名な宿泊施設もあるが、安藤忠雄の国際芸術センター青森や磯崎新の秋吉台国際芸術村など、こんなところに宿泊できるのか、とはじめて知った施設も多い。
建築に主眼を置いたエッセイのはずなのだが、なぜだかあまり建物に対しての具体的な紹介は少なく、宿の女中さんや女将さんと交わした会話などに紙幅が多く割かれており、中年男性向けの週刊誌に連載されているような内容だな、と思っていたら、あとがきで週刊新潮に連載していたと書かれており、ああ、なるほどと頷いた。
なので、建物紹介を期待して読むと、ろくに描かれていなかったりして、少しがっかりする。
また残念なことに刊行された時代が古く、紹介されているホテルも廃業して別の建物が建てられたり、大きく改装されたりしているところもあり、やはり宿泊施設で古い設備を維持していくのは難しいのだろうなと実感する。多くの宿泊客は誰が設計したのかよりも、水回りは綺麗か、壁紙は新しいかといったことを気にするのだろうし。
個人的に一度行ってみたいと思ったのは高野山の福智院。宿坊に泊まるなんて考えたこともなかったけれど、重森三玲の庭を眺めながら過ごすなんて贅沢だ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
好奇心が満たされる
- 感想投稿日 : 2018年12月30日
- 読了日 : 2018年12月30日
- 本棚登録日 : 2018年12月30日
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